食品卸業界の動向は・・・

21年度の小売業の売上順位は、イオンとセブン&アイHDとで首位の入れ替えがあったが、食品卸業界でも首位の入れ替えが起きていた。日本アクセスが売上高、利益ともに業界トップに立つ10年ぶりの首位交代も起きた。昨年4月から始まる会計年度から上場企業や大企業は新会計基準の適用が義務付けられている。その影響で売上高は、旧会計基準より減少した企業が相次いだ。食品卸業界でも影響あり、中でも三菱食品の影響が大きく、結果2位に転落した格好だ。

▼食品卸9社の21年度連結決算は、近年なかった好決算であった。コロナ前も上回る過去最高益となった企業が多かった。コロナ禍の影響が大きく、特に業務用やコンビニとの取引が激減した20年度からの立ち直りと逞しささえ感じる決算内容であった。21年は、前年の巣ごもり需要の反動減が見られるなか、業務用、コンビニとの取引は回復をしたが、コロナ前の19年度の水準には戻っていない。その中で大幅に増益して過去最高益を各社が打ち立てられたのは、この数年に渡り取り組んできた「コスト構造改革」に負うところが大きいようだ。

▼頻度の高まっていた小売業の「帳合変更」や物流費の高騰で、食品卸の収益性は大きく低下し、コンマ以下の経常利益率が常態化していたが、21年度は日本アクセス、三菱食品、加藤産業、伊藤忠食品、ヤマエグループHDの5社が1%を超えているのだ。「コスト構造改革」のひとつが物流改革になる。卸業の物流費は、全体経費の50%前後を占め、効率化は重要な施策のはずだ。ここ10年は、ドライバーの不足、庫内作業の人手不足が深刻化、更に人件費の上昇などで物流費は高騰した。これに対して、省人化につながる最新鋭の大規模センターの新設、老朽倉庫の集約などのセンター統廃合、引取物流やセンターと小売店舗間の配送ルートの見直し、ライバル卸との共同配送の実施。更に小売業に対しての配送頻度や発注単位、店着時間の見直しを求める交渉を行ってきたのだ。

▼これらの努力が、環境激変への対応を迫られたコロナ渦で大きく進展。三菱食品は、効率化による物流費改善額が35億円に上っている。日本アクセスは、コンビニ加盟店の理解のもと配送ルートの最適化を図った効果が出たという。コロナ渦はDXも加速させ、デジタルを活用しての業務の効率化が図られた。リモートワーク、リモート会議の定着など働き方も業務のあり方も様変わりしたという。

ただ、この、食品卸業界だが巣ごもり特需がなくなる一方で、業務用の完全な回復はまだ難しい状況。そこにコストアップの波が押し寄せている。ガソリン代、電気代、資材費などの高騰分も原価アップにプラスした納価が必要になるはずだ。

『食品値上げ、月内2万点超えも 帝国データバンク調べ』なる記事が8月1日の日経新聞に掲載されていた。

(2022・08・03)