年に何度か農業生産者と懇談の機会がある。新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ危機を発端に、農作物や食料の供給不安が起こったことは記憶に新しい。「国民が生きていけるだけの食糧をいかに安定的に確保するか」という食糧安全保障の重要性を改めて認識しておく必要がある。スーパーマーケットは、生産地から食卓までをつなぐサプライチェ—ン上での課題を今まで以上に考える必要がある。生産者との懇談も熱が入る。
▼昨日(8月7日)の『がっちりマンデー!!』のテーマは、「農業1億円プレイヤー!」だった。このTV番組、TBSテレビ制作で、毎週日曜に放送されている生活情報バラエティ番組だ。コーネル大学RMPジャパンの講師として登壇頂いた澤浦 彰治先生の会社「グリンリーフ株式会社」が最高の賛辞と共に紹介された。一緒にコーネル大学まで行って頂いたことも思い出し、爽やかな気分で見ることが出来た。
▼同時に、日経新聞の『データで読む地域再生』で農業出荷額の増減率で群馬県がトップとの記事が載っているのを思い出し読み返して見た。グリンリーフ(株)は群馬県の会社である。記事は、1ヘクタールあたりの農業産出額を都道府県別に算出し2005年から20年にかけての増減率を比べたもので、最も向上したのが群馬県で31.6%増となっていた。次いで山梨県(29.0%増)、長野県(26.7%増)が続いていた。
群馬県をトップに押し上げる要因の事例が記されていた。JA邑楽館林(館林市)が農家の経営安定性を高めるためキャベツの契約生産に注力したこと。消費が減る米や麦に代えて16年度から業務用や個食拡大で需要が増すカット野菜向けを拡大した。大きさを選別する手間がなく、出荷用段ボールなどを用意する必要もない。生産コスト低減に加え、定額で買い取られるため安定収入にもつながり、若い農家を中心に転作が進んだとある。結果、栽培面積は21年度までの5年間で4倍近くにも増えたとのことだ。
また、このキャベツだが、館林市は温暖な気候を生かして冬場にキャベツを生産する。一方、一大産地である高冷地の嬬恋村は夏場が出荷のピークとなる。JAグループ群馬は、「時間差」も活用した通年出荷の確立を目指し産地拡大に努め、県全体の作付面積を05年から20年にかけ2割拡大したとある。
▼面積あたりの農業産出額が大きい「稼ぐ農地」への転換が群馬県や山梨県で進んで来ている。担い手が減り耕作放棄地も広がる農業を再活性化するには、収益性を高める努力が欠かせないはずだ。カット野菜向けや加工度を上げるなど食を取巻く環境変化に柔軟に対応し、価格競争に負けない産品への切り替えが進み出している結果と見たい。
(2022・08・09)