野村総合研究所「生活者1万人アンケート調査」をよむ・・・

株式会社 野村総合研究所(NRI)は、1997年以降、3年に1度「生活者1万人アンケート調査」を実施している。全国の15歳〜79歳の男女計1万人を対象に、訪問留置法で生活像や生活価値観、消費実態を尋ねるもので生活者のトレンドを把握するのに適している。わたくしも、いくつかの組織からお声掛け頂き、定期的に情報交換の機会を頂いている。そこでの課題は、生活者の変化についての把握をすることが多い。いくつかの報告書を参考にしながら生活者像の把握に努めるのだが、この「生活者1万人アンケート調査」は強い味方になっている。なお、コーネル大学RMPジャパンに出講頂いている「JMR生活総合研究所」の松田 久一先生の『消費社会白書』も理解しやすい。

▼『生活者1万人アンケート調査』は、昨年の5月に調査し、11月に発表になった9回目の調査結果だ。サブタイトルは「コロナ禍で、日本の生活者はどう変化したか」だ。恥ずかしい話になるが、コロナ禍の影響もあり、9回目の調査結果が発表されることを失念していた。情報交換会の期日が迫ってきてから気付いた次第である。発表が昨年11月、調査は1年ほど前のものだが参考にしたい。

▼調査結果だが、NRIのNEWS RELEASEによると、特徴は以下の5点とある。

  • 景気・収入の先行きについては悪化の見通しが強いが、生活満足度は高水準を維持
  • テレワークの浸透などにより就業価値観が多様化
  • デジタルレジャーが伸長し、ショッピングもインターネットで完結
  • 制限ある生活の中でも楽しみを見出す志向から「プレミアム消費」スタイルが増加
  • 中高年層におけるスマートフォン保有が伸長し、情報検索もネット情報中心に

われわれの関心の高い消費のスタイル変化だが、NRIの設定している「4つの消費スタイル」の構成比変化を見ると、「利便性消費」(:購入する際に安さよりも利便性を重視)の割合が15年の44%から21年には41%に減少し、「プレミアム消費」(:自分が気に入った付加価値には対価を払う)が15年の22%から21年には24%に増加している。世帯年収が維持されている中で、コロナ禍による自粛生活が続いたことや時間的な余裕が生まれたことから、生活者は制限ある生活の中でも楽しみを見出すようになったことがうかがえるとある。他のスタイルは「安さ納得消費」(:製品にこだわりはなく、安ければ良い)と「徹底探索消費」(多くの情報を収集し、お気に入りを安く買う)がある。

▼気になるのは、「今年から来年にかけての景気の見通し」についての質問について、2012年には「悪くなる」と考える人が40%おり、その後15年に22%、18年には19%へと減少していたが、21年では46%まで増加している。調査の開始以来最も高い値で、人々の間でコロナ禍による景気後退の懸念が高いことを示している。収入面での見通しも悪化している。その中での生活者の生活満足度は、78%と調査開始以来最も高い値を示している事だ。

本当に、生活者は新しい生活様式に充実感を見出しているのであろうか。

(2022・08・13)