『急がば回れ』という諺が・・・

政府の物価・賃金・生活総合対策本部は、物価高に対する追加対策をまとめた。ガソリンの値上げを抑えるため、石油元売りに配る補助金を12月末まで延長する。対策に必要な3兆円超を2022年度予算の予備費から支出する方針だ。ガソリンは、上限35円/1ℓを超える分の半額を補助する仕組みだ。11月以降は上限を下げる案も報道されていたが、経済への影響を懸念して維持したようだ。

▼輸入小麦価格についても、10月以降も価格維持を続けパンや麺などの小麦製品の値段をコントロールする。畜産農家の費用を抑えるため配合飼料のコスト上昇分は国が補塡し、卵や肉の値上がりを抑える。住民税の非課税世帯に1世帯5万円の給付金を配ることも盛り込んだ。地方自治体が困窮者支援などに充てる地方創生臨時交付金も予備費などを使って積み増すとある。

▼確かに円安の進行で輸入物価は上昇が続いており、原材料の値上がり、電気料金や食料品価格などの引き上げが今後も見込まれるなかにあっては、その影響を和らげる対策が必要なのは確かに分かる。ただ、最近の政府施策はバラマキになるように思えてならない。

電力、ガス、食料品等の家計負担が大きい世帯を支援する目的で、住民税が非課税の約1600万世帯を対象に5万円の給付金を予定している。日本の2021年の世帯数は5,785万世帯であるから、非課税世帯は全世帯の4分の1強になり、その約7割は高齢者世帯になる。物価高の影響が相対的に重くなりやすい立場にあることは理解出来るが、高齢者には収入が少なくても多くの資産を持つ人がいるはずだ。非課税でなくても、食べ盛りの子どもがいるなどで食料品の値上げに苦しむ世帯もあるはずだ。所得だけの線引きは不公平感の高まりに繋がらないのだろうか。

▼何日間か続けて政治関連の内容になってしまった。給付金は必要性や対象をしっかり精査して実施すべきと願うのだが、この課題はコロナ禍でも露呈していた。政府の取り組みは鈍いままなので納得できないし、補助金による価格抑制は、緊急時の緩和策にするべきだ。長期化すると、市場機能をゆがめるし、イノベーションに繋がらない。再生可能エネルギーへの移行策や省エネルギー促進策と合わせた戦略が要るはずだ。

小売業でも、お客さまを創らないで売上をつくる施策は、後でその商品と店を弱めることに繋がる。急いで気持ちが焦ってしまうときほど失敗してしまうことがあるので、遠回りでも確実な道を進むことが大切という意味で『急がば回れ』という諺がある。ビジネスを展開する上で覚えておきたい戒めの諺のはずだ。

(2022・09・11)