「Wegmans SCAN」突然の中止の原因は・・・

カインズが、今月1日から無人決済店舗の実証実験を始めたとの情報があったので、体験しようと行ってみたが残炎ながら従業員限定で利用できる実験店舗であった。上越新幹線本庄早稲田駅の目の前にあるカインズ本社の入り口を抜けると、すぐ左手に「カインズモバイルストア」があった。外からしか見ることが出来なかったが、緑を基調としたガラス張りの店舗でコンビニエンスストアのようだが、店内にレジは無く、店員もいない。

▼実験は2023年春まで続け、買い物のしやすさや防犯性などを検証する予定という。レジ業務の無人化によって人件費を抑え、将来的には都市部など出店エリアの拡大につなげたい考えのようだ。専用のスマートフォンアプリのQRコードをゲートにかざして入店する。店内上部にカメラが取り付けられており、入店後の利用者の動きを認識してどの商品を手に取ったのかを判断する。利用者が商品を持って店を出ると、自動的にアプリ内で決済される仕組みである。この実証実験の目的は、将来的に無人店舗を出店することではなく、人件費の圧縮にあるという。

▼しかし、レジ業務の簡素化に向けての取組みが世界的に進むなかだが、Wegmansは「ウェグマンズ・スキャン(Wegmans SCAN)」を中止することを発表したとのニュースをアメリカン流通コンサルタント 後藤文俊氏が伝えている。スマートフォンに専用のアプリをダウンロードし、商品バーコードをスキャンしながらレジで決済するWegmans SCANは18日以降、利用できなくなる。2019年からテストを開始し、コロナウイルス感染拡大が顕著となった2020年5月、46店舗にも拡大。現在までに94店舗で導入している。Wegmans SCANについては、3月17日にこの「Message from Program Director」欄で取り上げたばかりである。

▼パンデミックの影響で人との接触を最小化することで新型コロナウイルスの感染拡大の防止にもなっており、モバイル・チェックアウトの需要は増しているなかでの突然の中止なのだが、原因は万引きロスにあるという。ロスによる損失額は公表していないが、9割近くの店舗に展開し顧客にも人気のアプリ機能を中止するので相当なロスをだしていた可能性がある。中止に当たりWegmans SCAN利用者には20ドルのクレジットバックをすることも明かしている。日本流に表現すれば「断腸の思い」であったと推察できる。

Wegmans SCANと同様なシステムを米国では多くのスーパーや小売チェーンで導入しているのだが、Walmartのスキャン&ゴーは過去に2度も中止していた経緯がある。クローガーでも「Scan Bag Go」を停止しているのだ。『Loss Prevention Magazine』誌によるとセルフチャックアウトでは万引きが33%も増えるとの試算をしているともある。

ただ、慢性的な人手不足の課題もあるので、Wegmans SCANを永久に停止するとは思えない。何かの特典を付けて再生させると思う。それを楽しみにしておきたい。