昨日に続き、『Diamond Chain Store』誌(9月15日号)の特集記事である「日本の小売業1000社ランキング」を見てみたい。コロナ禍の影響で実力以上の業績となった企業も少なくなかった2020年は、スーパーマーケット(SM)業態やドラッグストア(DgS)業態などは特需を受けた格好だった。業態間格差が顕著だったのだが、今年度(21年度)はどうだったのか。SMに影響があるであろうコンビニエンス(CVS)業態、DgS業態それに百貨店の動きを見ておきたい。
▼先ずは、消費者の生活様式の変化の影響で、市場が縮小傾向にあるCVS業界だが、「2021年度のCVSの市場規模は10兆7816億円(対前年比1.1%増)と増加したものの、前年度の落ち込み(4.5%減)を挽回するには至っていない」とある(日本フランチャイズチェーン協会)。昨日も記したが、22年2月期チェーン全店売上高を見ても、セブン-イレブン・ジャパンが対前期比1.7%増の4兆9527億円、ファミリーマートが同2.8%増の2兆8419億円、ローソンが同2.1%増の2兆2119億円。いずれも増加しているが、コロナ前には戻っていない。かつてのような積極出店も難しくなるなか、海外事業の強化や、店舗を起点とした宅配サービス、広告・メディア事業の拡大など、新たな成長を求める動きが加速している。
▼1000社ランキングに入ったDgSの企業数は111社で、売上高の合計9兆3900億円(対前年比1.0%減)で、前年よりわずかに減少した。20年度の反動減の影響が大きいとみられる。業態内での首位は、ウエルシアホールディングスで3年連続での首位だ。22年2月期(連結)の売上高は、対前期比8.0%増の1兆259億円と、業界で初めて売上高を1兆円の大台に乗せた。2位はツルハホールディングスで、22年5月期の売上高は9157億円(同0.4%減)だった。上場以来初の減収となっている。3位はコスモス薬品で、22年5月期の売上高は7554億円だった(新収益基準適用のため前期比較はなし)。急成長を続け、年間120店舗という高速出店で来期23年5月期には8135億円に達する見通しだ。DgS業態は、主力扱い商品の特徴から上位集中の宿命を持っている。
▼昨年同様に最も総売上高が落ち込んだのが百貨店だ。総売上高は3兆2289億円(対前年比22.0%減)である。1000位以内の企業数も昨年から4社減少して58社だった。コロナ禍での事業環境悪化に加え、一部企業が「収益認識に関する会計基準」を適用したことから売上高が大きく減少している。しかし、今年度は増収・黒字確保となった企業も少なくない。人の流れの復活、インバウンド需要の回復などが待たれるところである。
特需を追い風に成長が続く企業とそうでない企業の企業間格差も見え始めた。実力差がはっきりした格好のようだ。コロナ後の生き残りをかけて上位企業を中心とするM&A(合併・買収)も活発化するかもしれない。
(2022・09・19)