小売業界でのDigital Transformation(DX)推進の代表例として、「レジレス店舗化」への動きがある。全国スーパーマーケット協会の調査では、セルフレジは2003年に大手で導入が始まった。21年の調査では、客が全ての操作を行う「フルセルフレジ」を置く店の割合は19年の11.4%から21年に23.5%へ上昇。レジ担当が商品をレジ登録だけして、精算は客が行う「セミセルフレジ」も合わせると更に比率は高く、身近なものになった。
米国では、FMI(食品産業協会:The Food Industry Association)の調査によると、スーパーマーケット(SM)96社の3.8万店のうち96%にセルフレジが導入されているある。ただ、何度か報告したが、米国では万引きの被害が高まっている。
▼人手不足対策として導入されたセルフレジだが、新型コロナウイルスの影響でレジ担当とお客さまの接触を減らす傾向も後押し普及は加速度を高めて来た。その反面で、国内でもスーパーマーケット(SM)各社、「セルフレジ」を悪用した万引き被害増加に頭を悩ませているという。NPO法人「全国万引犯罪防止機構」の担当者は「セルフレジを導入した後に万引き被害が増えたケースが目立つ」とコメントしてもいる。セルフレジの特徴は「非対面・非接触」にある。「人の目」の少なさにつけこまれた格好なのだろう、万引き犯は大胆な犯行が繰り返されているようだ。
▼米国での調査だが、セルフレジでの万引きは、① 量り売りのバナナを使って同じく量り売りで高額な商品を決済するという「バナナ・トリック」、② 商品をスキャンせずにポケットにいれる「パスアラウンド(スキャン・スキッピング)」、③ カートにある商品をジャケット等で隠しておく「カバーアップ」、④ 価格の安いバーコードを用意して同質量でより高額な商品をスキャンっする「スイッチャルー」の4種類が代表的な手口のようだ。万引き被害が経営に及ぼす影響は大きく、小売業サイドも対策を強化している。ただ、故意の万引きと悪意のない単純な精算ミスかを見分けるのは難しいという点もある。日本のSMの担当者も「故意にレジを通さなかったのか、ミスなのかを見極めるのが実際は難しい」と話していた。
▼万引き犯罪の抑止狙い、セルフレジにお客さまの顔を撮影するカメラを設置する、かごの中身と会計後の商品の重さが同じか検知するシステムの導入や精算機器ごとにお客さまの手元を映すカメラを設置、レジ近くに店員を配置する、袋詰めは店舗スタッフが行うなどの対抗策を取り始めている。会計をハイテク化しても新しい課題が出てくるものだ。対策・・・「いたちごっこ」にならないことを願う。
しかも、お客さまサイドの不用意な振る舞いで万引き犯と間違う恐れもある。環境問題でのエコバッグを持ち込むが、口を必ず閉じるとか、カバンや袋に入れておく、余計な荷物は持ち込まないとかを推奨する必要も生まれた。
買い物を巡る環境は変わった。気持ちよく買い物するための新しいマナーを呼びかけたい。
(2022・10・12)