ランキングを見て目にとまるのが、日本でもファンが多いTrader Joe’sの過去5年間での成長率が、他社との比較で相対的に低い点である。これは、自社ECサービスを展開していないことに加え、Instacartなど外部の買物代行サービスとも連携しておらず、リアル店舗のみを販売チャネルとしていることが要因と思える。Trader Joe’sの特徴であり、経営方針なのだが、EC対応が売上拡大の重要条件であるなかでは見劣りがしてしまう。
▼ドイツで創業したハードディスカウンターのAldiとLidlの動向が気になる。欧州では広く店舗を展開してきた両社だが、米国では1970年代に進出し市場を開拓してきたAldiを、2017年に上陸したLidlが追いかけるという構図になっている。コーネル大学のあるイサカには、Aldiの店舗があり、必ず店舗見学をしている。インフレ下でディスカウンターに対する需要が高止まりするなか、どのような戦略を描いているのか。
▼Aldiは米国で22年度に87店を新規出店した。23年度には120店舗を出店する計画で、今期の終了時には2400店舗になる見込みだ。とくに米南東部での成長が著しく、1月にはアラバマ州ロクスリーにあるDC内に地区本部を設け、ルイジアナ、アラバマ、ミシシッピ、フロリダの各州にある約100店舗を管理する体制を構築。H-E-B、Publix、Grocery Outletとの戦いを展開している。これらの企業も小型店の開発を進めている。
▼Aldiは出店と並行して、ECへの投資も強化している。18年には買物代行のInstacartと提携、22年にはEC専業のスプリカーシステムズ社のプラットフォームを活用してネットスーパーを開業した。さらに今年2月、DoorDashとも提携し、アプリ経由でのネット注文に対応、35ドル以上の購入を条件に即日配送にも対応している。コロナ前は、ECは実店舗の脅威と捉えられていたが、コロナ禍を経て、リアルとネットでの相乗効果を生み出しながら売上を最大化することが“成長の条件”になっていくことが予想される。
2023/10/16