「ザ・ビートルズ」AI活用の新曲・・・

1960年代に世界を席巻した「ザ・ビートルズ」の新曲が、3日に発売された。「ザ・ビートルズ」は、1962年にデビューしてから解散するまでの8年の間に数々の名曲を発表、世界の音楽シーンに絶大な影響を与えている。今回の新曲、1980年に凶弾に倒れたメンバーだったジョン・レノンが、亡くなる数年前にテープに残していた曲「ナウ・アンド・ゼン」で、テープに残した曲の音源に、AIを活用するなどして完成させた最後の新曲になる。

▼テープの音源はジョン・レノンのピアノの弾き語りで、雑音などが多く混ざっていたが、楽器の音や歌声を別の音源から学ばせたAIを使い、ピアノの伴奏や雑音を取り除いて、ボーカルだけを取り出した。それに、メンバーのポール・マッカートニーとリンゴ・スターが新たに演奏を加えるなどして曲を完成させたとある。「曲からは本物のジョン・レノンがいるように感じた。とてもすばらしかった」との談話がTVニュースで流れていた。

▼「ザ・ビートルズ」の来日時の熱狂は、よく覚えている。過ぎた歳月を思い、郷愁にひたる面もあるが、それより何よりAIを使っての新曲発売という事が驚きだ。既にインターネット上にある膨大なデータを学習することで、指示どおりに新たな文章や画像などを生み出すことができる人工知能「生成AI」まで出現している。今回は、機能を駆使してボーカルを取り出したのだが、もう音楽やプログラムまでも際限なく生み出し始めたのだ。

▼小売業界でも、「セブン‐イレブン・ジャパンは、商品企画に生成AIを導入し、AIに販売データやSNSの声を分析させ、流行やニーズに合った商品を素早く売り出す」と日経新聞が報じていた。米国などでは店内のカメラで顧客の興味ある商品を把握したり、健康状態に合う商品をスマホに表示したりするなど「リテールテック」の活用が進むが、商品開発で生成AIを使うのは珍しいとある。このシステム活用で、企画にかかる期間を10分の1に短縮するともあった。技術活用の裾野はどんどん広がってきたが、社会のあらゆる分野で「創造」と「破壊」が起きるのだろう。

2023/11/06