内閣府が発表した23年7~9月期のGDP(季節調整済み)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0.5%減、年率換算2.1%減のマイナス成長だった。食品価格の上昇などで家計の節約志向は強く、GDPの5割超を占める個人消費が減少した。年率換算の成長率は前の2期がそれぞれ3.7%増、4.5%増と高水準だっただけに、景気の急変ぶりが際立っている。この期の不振は、個人消費の前期比0.04%減、GDPへの寄与度は「内需」がマイナス0.4ポイントとの説明があった。
▼食品スーパーを取巻く環境は大きく変化している。コロナ禍が一段落したかと思えば、22年後半から世界情勢の混乱に伴う「値上げラッシュ」が到来した。帝国データバンクの調査によると、食品の値上げはピークアウトの気配はあるが既に今年も3万品目を超える値上げがあったとある。ただ、この値上げ効果もあってか、食品小売の足元業績はおおむね好調に推移している。中間決算では、「節約志向が高まっているわけではない」との発言も多い。
▼もっとも、全体では来店頻度を含めた客数は減少傾向にあるようだ。消費者が消費に対して慎重になっている可能性は高い。総務省が23年11月に発表した家計調査(23年9月分)では、サラリーマンなど勤労者の2人以上世帯の実収入は、物価の影響を除いた実質ベースで前年同月から5.8%減となり、12カ月連続で減少。可処分所得も同4.7%の実質減と、こちらも12カ月連続で減少している。春に賃上げの動きなど明るいニュースもあったが、「可処分所得」は伸び悩み、足元ではその傾向がさらに強まっているのだ。
▼節約志向の高まりは確かにある。そうしたなかで高まっているのが、ディスカウントに対するニーズだ。「消費の二極化」が指摘されるようになって久しいが、同じ消費者でもオケージョンやモノによって高いものと安いものを買い分ける「賢い消費行動」が定着しつつある。トレンドの変化を商機ととらえ食品スーパー新しいフォーマットが次々と生まれている。業種から業態へ、そしてフォーマットによる独自性の追求による戦いが熾烈になって来た。
2023/11/18