外食チェーンの独創性は・・・

かつては流通業以上に米国を勉強し、熱心に米国視察を繰り返していた外食業界は、パタリとそれを止めてしまった。マクドナルドの日本進出を契機として、米国外食業には、ファーストフードサービス(FFS)やファミリーレストラン(FR)という「業態」を学んだ。そこで「外食業」も、チェーンになり大企業になり得る可能性があることがわかった。そこで外食業界は、挙って米国視察に出掛けた。島田研究室の島田陽介氏の解説である。

▼流通業以上に熱心だったとある。流通業の場合は、Safeway、Searsと成果を出せず撤退した。最後にWalmartが出てきてが、結局は撤退を余儀なくされた。一方、外食業では、MacDonald、ケンタッキーフライドチキン(KFC)を筆頭に顕著な成功例が生まれた。ただ、流通業の場合と同じく、これら企業の成功に触発され、日本がマーケットであると進出したほとんどの米国外食チェーン企業は、いま生き残っていないか、数店舗が名残をとどめている程度だ。

▼逆に例えばミスター・ドーナツのように、元々は米国のものだが、米国では中小企業であり、大企業に成長させたのは日本企業である。現在の商品ラインアップはすべて日本版であるという出藍の誉れの事例さえある。外食業では米国外食業チェーンのロジックだけ学んで、独創的なチェーンを創造して来た。牛丼、讃岐うどん、ラーメンなどの各チェーンは、米国には「お手本」の存在しない、日本独自のチェーンを独創して来たのである。

▼「デニーズ」は、1973年に米国のデニーズに忠実に、メニュー・調理器具・レシピなど再現し、イトーヨーカドー上大岡店(横浜)の1階に開店した。ただ、忠実に再現したことは間違いと気づいた。そこで1984年に商標権を買い取り、全面的に日本版に改訂し今日のデニーズを創造したのだ。今は、米国デニーズなど比較にならない程の独創的メニューを生み出している。米国企業の「経営」そのものを学ぶのではなく、それを実行し、「自分で考える」ことを通して、養われるモノを創造することこそが大事ということになるのかも知れない。

2023/12/09