他業界の「経営戦略」を見てみたい・・・

家電エコポイント事業(正式にはエコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業)は、地球温暖化防止、経済の活性化、地上デジタル放送対応のテレビの普及を目的として省エネルギー性能の高いエアコン・冷蔵庫・地上デジタル放送対応テレビを購入した者に対して一定のエコポイントを付与し、これを使ってエコ商品等を購入できるようにするという制度であった。リーマン・ショックを機に政府が、09年度の補正予算などにおいて経済・景気対策の1つとして行った事業である。

▼09年5月に始まり、当初は10年3月末日までに購入した対象商品が家電エコポイント付与の対象であったが、その後10年12月末日、11年3月末日と、条件を厳しくしながら延長された。地上デジタル放送対応テレビの導入促進や家電の買換えによる景気刺激策であった。家電の市場規模は7兆円に達したが、終了後は4兆円台まで縮小してしまう。この政策は、「消費の先食い」を招いたともいえる。

▼コーネル大学RMPジャパンの12月のテーマは、「経営戦略」なので、変化する環境の中での家電業界の企業戦略を見てみたい。この業界で対照的な戦略をとっているのが「ヤマダホールディングス(ヤマダ)」と「ケーズホールディングス(ケーズ)」になる。住宅や家具の販売に乗り出してコングロマリット化するヤマダ、家電販売に専門特化するケーズ。2社の戦略の違いは業績にどのような違いを生んでいるのだろうか。

▼ヤマダは、特需が発生した11年3月期の売上高は2兆1532億円まで膨らんだが、23年3月期の売上高は1兆6005億円であった。11年10月に「エス・バイ・エル」、19年12月に「大塚家具」、20年10月には「ヒノキヤグループ」などを買収したが、売上高は全盛期の7割程度まで縮小しているのだ。ヤマダ電機は、松下電器産業(現パナソニック)の販売店として73年に創業。訪問販売主流の方式を、大量に商品を並べて安く販売する現在の家電量販店を広めた会社の一つになる。(続く)

2023/12/20