「金欲」が、経済・社会・生活を活性化させるエンジン・・・

昨日の続きになる。上原征彦先生の近著『欲望の生産性』(日本生産性本部)によると、ビジネスは、金欲を組織的に達成する方法論そのものだといえる。個々人の金欲達成よりも、ビジネスによる方が遥かに膨大な収入を得ることが可能になる。その上、企業(ビジネス組織)の構成員(従業者)は、金欲の達成労力を大幅に軽減できるので、それを我欲の追求に回すことができる。ビジネス組織に参加することで、我欲達成のキャパシティを高めることができるという点に注目すべきだ。

▼このように社会生活に於ける金欲の意義は極めて大きい。資本主義の発展と社会の進歩、我々の生活の向上は、金欲とその達成度の不断の拡大によって実現し、充実してきたのだ。ここで、重要なことは、健全に儲けるビジネスを展開するには、相応の努力が必要であり、そこでは、他の欲望(飲食欲・遊興欲•休憩欲など)を抑制していかねばならない。すなわち、金欲の達成には、多かれ少なかれ、禁欲が要請されることになる。

▼ドラッカーの「ビジネスの目的は社会貢献であって、儲けることは企業存続の必要条件でしかない」と述べ、多くの知識人に支持されている事に対し、上原先生は「ビジネスの本質を捉えていない言明だ」と言っている。「ビジネスの目的は儲けることであって、社会貢献は企業存続の必要条件でしかない」と修正すべきと言う。すべての組織は社会貢献を必要条件としているが、有意に儲けて社会に還元する能力を最も備え、これを展開できるのがビジネスの真骨頂だという。

▼勿論、社会に害を負担させるビジネスは淘汰されていくだけでなく、儲けも無いのに規模と伝統を誇りにしてきた大企業型ビジネスも消えていく確率が高まるであろう。ビジネス組織は、一般の生活者と比べて多くの地球資源を消費している。これからの企業は、自らが消費した地球資源を補填できる利益の創出が要請されるはずだ。その意味、企業が儲けることは、地球環境保全のための必要条件になっていくであろうとも述べられている。上原先生の集大成の著作と聞く。ビジネス活動の本質を論理的に教えて頂いた。

2024/01/03