コーネル大学RMPジャパンの1月の講義は、食品スーパーの脅威を明らかにし、収益性を高める糸口をつかむことにあった。食品の売上構成比を伸ばしている「ドラッグストア(DgS)業界」の現状と課題も主なテーマのひとつになる。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の実態調査によると、DgSの22年度の推定市場規模は前年比2.0%増の8兆7134億円。店舗数は2万2084店で、前年より359店の増加となったとある。
▼市場規模が拡大した要因だが、大手6社(ウエルシアHD、ツルハHD、マツキヨココカラ、コスモス、サンドラッグ、スギHD)など、上位企業の旺盛な出店が続いていること。人流やインバウンドの回復で、化粧品などの売上が増加したこと。食品の強化、これに値上げ効果が加わったことによる。コロナ禍では、マスク・消毒剤・検査薬のコロナ商材、食品・日用品の巣ごもり商材が伸び、コロナ収束後は、化粧品、OTCが回復するなど、いかなる環境でも市場が拡大する様相にある。
▼JACDSの調査では、市場規模は22年連続で拡大している。ただ、大手のM&Aと競争激化で企業数は逆に減少が続いているとある。22年度の調査では、10年前と比べ142社減の381社とあり、中小チェーンの淘汰が急速に進んでいるようだ。しかもDgSは、人口約6400人に1店の割合で存在(日本リテイリングセンター調べ)しており、有力チェーン同士が熾烈な戦いを展開している構造にある。
▼DgSの主力商品である薬粧は、メーカーの影響力の強い商品群になる。品揃えを始めとして、価格戦略で競合店に差をつけるのは限定的にならざるを得ない。商圏で最も支持されるものを、他の要素で備える力が無ければ生存は難しくなる。ウエルシアHDが、カウンセリング強化に力を入れていること、アオキが青果と精肉だけでなく、鮮魚も扱う店舗を増やしていること、コスモス薬品が、厳しい原価交渉とローコストオペレーションだけでなく、荒利を削ってまで価格訴求を始めたのもそのためだと思う。
2024/01/29