「ユニクロ」の価格が、コロナ前に比べ平均して15%近い値上げになっている。どうも、値上げに相応するように客数が減少しているのが実態のようだ。客数にはインバウンドの客も含まれるから、国内客の減少は開示している以上になるはずだ。アパレル業界の評論家は、「低価格高品質な国民的カジュアル」としてポジションを確立したが、値上げにより「中産階級向け高機能高品質ナショナルブランド」に変貌しつつあるという。少し大げさな表現のようにも思える。
▼一方、「しまむら」は、付加価値PBを拡充しても基本商品の値上げは抑制して「庶民価格」を維持し、19年比でも客数を伸ばして既存店売上を大きく伸ばしている。「しまむら」も、実質賃金の減少が続き、消費が冷え込んだ23年秋以降は客数が減少し、売上伸び率も鈍化はしているが、19年比での伸び率は客数、売上でも他社比較で突出している。衣料品ポピュラープライスは、インフレ下でもあまり動いていないようだ。
▼米国のインフレ率は、21年4月以降4.0%超で推移し、賃金上昇率を上回っていたが、23年5月には4.0%に、6月以降は3%台と沈静化、賃金上昇率を下回りインフレの局面は25ヶ月で終わった。食事に関する支出は、コロナ明けで盛り上がった21年春からのリベンジ消費もインフレに押され、チップの慣習もあって高額化した外食を回避して食品スーパーのイートインやテイクアウトに流れたのはご承知の通りだ。
▼百貨店の売上回復は、23年2月までの3シーズンで終わり、以降は9月を除いて前年を割り続けいる。19年比でも売上を割り込む月が多くなり、11月、12月と落ち込みが大きくなっている。一方で、アパレルチェーンは21年の3月以降は19年を上回り続け、23年の3月以降も19年比2ケタ増を継続している。より低価格なオフプライスストアや量販店(ウォルマートやターゲット)の衣料PB、激安価格の中国系越境ECへのダウンサイジングが急進しているようだ。
米国と同様の動きになるとしたら24年の4月まででインフレ局面は終わり(インフレ率が賃金上昇率を下回る)、百貨店など高額分野でのダウンサイジングが加速するのかも知れない。ますますインバウンド消費が頼りになるのだろうか。
2024/02/26