熊本県の菊陽町がバブルの賑わいを呈しているとのTV報道があった。人件費の高騰、物価も高止まりどころか更に上がっているらしい。要因は、台湾積体電路製造(TSMC)が日本の生産拠点となる熊本工場の開所式を催し、本格稼働が秒読みに入ったからだ。このTSMC熊本工場を「キャベツ畑」と「クリーンルーム」との対比で報道されてもいる。関連産業も含めれば、九州全体で10年間に20兆円以上の経済波及効果が見込まれるらしい。
▼福岡県が開設した「福岡半導体リスキリングセンター」の講座も盛況という。従業員だけでなく、社長自ら受講する地場中小企業もある。TSMC進出で活気づく半導体のサプライチェーンに食い込もうと、リスキリングで商談の円滑化や事業の改善を狙う意欲で溢れているらしい。半導体がもたらす経済への貢献、投資誘発効果がいかに大きいか推測できる。バブルの頂点だった89年当時の日本の半導体産業は、まさに世界を席巻していたのだ。
▼NEC、東芝、日立製作所と世界の半導体出荷のトップ3に日本企業が並んでいた。ただし、強すぎる日本の半導体は激しい貿易摩擦を生んだ。日米間でも価格の規制や外国製半導体の国内利用が盛り込まれた協定を結ばざるを得なかった。その上、90年から日本メーカーは、挙って中国での大規模集積回路(LSI)の生産を始めた。結果、半導体は国際競争力が低下、同時に株価崩落が始まったように思える。日本経済が下り坂に入り始めたのだ。
▼当時は、中国を始めとする東南アジアへの企業進出であったが、今回のTSMCの熊本工場開設は、逆に生産拠点として日本が選ばれる時代になったのであろう。きれいで豊富な水がある事に加え、日本の製造業が技術の基盤を残してきたからこその事だ。円安も輸出面での競争力を押し上げるはず。デフレが続きに萎縮せざるを得なかった時代から、環境が変化したことを意識したい。新しい世代交代で、再び世界で競える新たな製品やサービスに挑みたい。
2024/03/05