金利ある世界への備えが・・・

物価が上昇し、これに対応する春闘などでの賃上げを受けてか、日銀がマイナス金利解除に動いた。マイナス金利政策が日本の企業にとっては、低金利で資金調達ができ収益拡大に繋がって来たことに間違いない。資金調達コストが安くなり、積極的なM&Aを可能にしてきた結果、M&Aは企業戦略として定着した観がある。なにより、東証プライム市場に上場する企業の24年3月期は3期連続の最高益を見込んでいる。

▼ただ、8年も続いたマイナス金利は、低金利状態に対する「慣れ」を引き起こした面も否めない。資金調達が容易だったことで、企業が延命できたので、俗に言われている「ゾンビ企業」が蔓延り、新陳代謝が起こりにくくなったのだ。長短金利操作の撤廃や上場投資信託などの買い入れを終了するといった大きな修正だったが、金融関係者は想定内との受け止めで、日経平均株価は月末に向けて騰勢を強める公算が大きいと言われている。

▼ファミリーマートの細見研介社長は、「金利上昇とインフレが消費心理を停滞させ、景気が縮小に転じて与信不安が生じることを懸念する。店舗の損益や在庫管理など慎重に投資判断する」とのコメントを日経新聞紙上で発表している。TV番組でも、マイナス金利が解除されれば、政策金利、短プラ、変動型の基準金利という順番に上昇が波及するとの連想が働くのであろう、住宅ローンの返済額を心配する報道が中心を占めている。

▼これで円安にも歯止めと思っていたが、日銀が追加利上げを急がない姿勢を示唆し、日米金利差が縮まりにくいとの見立てからか、20日の外国為替市場で対ドルの円相場が一段と下落した。「円高なり、直ぐに仕入価格に反映されるものではないだろうが、適正価格を維持し、客数を増やしたい」と円高への転換を期待するコメントもある。17年ぶりの利上げを冷静に受け止め、個人消費や資金調達環境への変化を見極め、金利ある世界への備えが必要になる。

2024/03/21