社長の「夢」に共感した社員が・・・

4月に入り、新年度、新入社員の高揚を意識した特集記事が日経新聞のトップを飾った。「社長100人夢を語る」とある。バブル崩壊にリーマン・ショック、東日本大震災などが起こり、経営者はリスクを避け、成長に向けた投資よりもコスト削減による利益の確保に邁進して来た観があった。夢を描くことを避けるような期間が長かった。しかし、稼ぐ力や株価が上がり、未来を見据えて経営者が夢を語り始めたとある。嬉しい気持ちになってくる。

▼停滞の30年で仕方なかったのだろうが、縮小均衡の経営からのモードチェンジが始まった。国の富の源泉は、政府でも家計でもなく企業にこそある。経営者の夢、それに向かう決断が、次の飛躍の舞台へと向かわせるはずだ。日経新聞が主要企業の社長にアンケート調査を実施した結果だが、「社会課題の解決」や「世界一」を目指す夢が多かった。経営判断で従来よりもリスクを取るようになったとの回答も8割近くに達したとある。

▼3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の2023年12月調査(プラス13)から2ポイント悪化してプラス11だった。悪化は4期ぶりだが、理由は明確だ。ダイハツ工業が認証不正で自動車の生産を停止したことを受け、自動車関連の大企業で景況感が前回調査より15ポイント悪化しプラス13となったからだ。鉄鋼や非鉄金属など関連産業もあおりを受けて悪化したのだ。

▼経営の潮流も変わらなくてはならない。社会での存在意義を重視する経営やESG(環境・社会・企業統治)を意識した経営を広げなくてはならない。これまでのように特定の利害関係者だけに重きを置く経営は過去のものとなるだろう。渋沢栄一の言葉に「夢なき者は理想なし、理想なき者は信念なし」というのがある。社長が語る「夢」に共感した社員が、その企業の成長エンジンとなるはずだ。夢を持って動き出した会社には人も売上も約束されると思う。

2024/04/03