食品スーパーを取巻く環境の中で、商品調達、川上の動きが気になって来た。生産過剰となった米の生産量を抑制するために実施された減反政策は、2018年に廃止され、各地で米余りの状態が見られるようになって来ていたが、大手米卸の米在庫が不足しているとの報道があった。5年産米が獲れていないことの証明なのかも知れない。市場に出てくる流通量が極端に少ないため、特売の頻度が減っている。価格は13年ぶりの高水準にあるという。
▼高齢農家のリタイアと担い手不足による生産力の急速な低下、異常ともいえる気象状況の変化、インバウンドによる需要の変化など、青果物を取巻く環境は、これまでとは異なる状況になりそうだ。限定商圏でいかに効率的に運営するかが小売業経営のカギとなると考えると、特に食品スーパーは、より川上の事業者と一緒にサプライチェーン全体を組み替えていくことが、強さや差別化にもつながっていくと思える。商品の調達力を高めたい。
▼山梨県の「オギノ」の持ち株会社、「オギノホールディングス」は地元の青果卸「甲府青果」を買収し、完全子会社化した。オギノにとって甲府青果は、祖業の服地専門店から食品事業に参入した約50年前に青果の商品調達を担って以来、取引を継続している関係の深い青果卸であり、甲府青果側の事業継承の問題解決のために買収に踏み切ったかたちだ。人口減の商勢圏で青果の安定調達を図り、県内ではどこにも負けない青果の調達・販売力を手にすることを目的としたようだ。
▼人口80万人弱しかいない商圏規模が小さな山梨県では、調達先の卸売業もそう多くない。この店でしか手に入らないものを提供し、その為の「作り手」や「市場・卸」との長期的な関係づくりが極めて大事になって来る。甲府青果が有する「個包装パッケージ機能」、「カット野菜やカットフルーツをつくるカット機能」、「在庫型物流センターとしての機能」、「物流機能」を最大限活用して、オギノ以外の小売業にも販路を広げたり、カット野菜などの加工業者からの受注も増やしたりしたい考えのようだ。
2024/06/19