(昨日からのつづき)次にPERMAの「M」「A」、すなわち人に仕事の意味・生きる意味などを通じて達成感をもたらすメカニズムについての理論の解説になる。人が成功のために何かを目指して行動したり、逆境を乗り越えたりするための、認知のあり方を入山 章栄教授は「希望理論」「マインドセット理論」「グリッド理論」を整理している。
▼先ずは「希望理論」は、カンザス大学のC. R. スナイダーによって1990年代に提示された理論。目標達成に対する望ましい心の持ち方を説明する。単なる楽観主義ではなく、目標を達成するには次の2つの認知要素が重要と主張する。
・agency(意思):困難に直面しても「自分は目標に向かって進み続けられる」という信念。
・pathways(道筋):目標到達するための具体的なルートや計画、代替ルートを描く柔軟性。
これらが高い人ほど、レジリエンスが高いことなどが、これまでの実証研究で示されている。
▼「マインドセット理論」は、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエックが2006年に著した理論である。自分自身の能力・知性に対する信念(マインドセット)をどう持つかが、その後の学習意欲や成功に影響を与えると主張する。マインドセットは、2つに分かれる。
・固定マインドセット:人の才能・知能は生まれつき決まっており、変えられないと信じ、失敗や困難を能力の限界の証拠と捉えやすい。挑戦より安易な成功体験を好み、批判やフィードバックに防衛的になる。
・グロース・マインドセット:才能や知能は努力次第で伸ばせるものと考え、難題に価値を見出し、失敗を学習プロセスの一部と見なす。努力による成長を信じ、フィードバックや試練を成長の糧として前向きに捉える。
「グロース・マインドセット」の言葉とともに、「Microsoft」など世界中の企業文化の変革や人材育成にインパクトを与えてきた。
▼「グリット理論」は、日本でも、『やり抜く力』(ダイヤモンド社、2016年)で知られる考え方の基盤となる理論であり、ペンシルバニア大学のアンジェラ・ダックワースが提唱した。「グリット」は情熱と粘り強さの側面で構成される。「情熱」とは興味関心を持続することで、一貫して目標を追い続ける力を指す。「粘り強さ」は、困難に屈せず、努力を積み重ねる力を指す。グリットは人の性格特性に近いが、完全に不変ではなく、後天的に育まれうるとも主張されている。ダックワースの研究によれば、高いグリットを持つ人ほど学業成績や職業上の成功、試験の合格率などが高いことが示されており、「IQや才能よりも成功の指標となる特性」として注目されることもある。(次週に続く)
2026/03/08



