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Program Director’s Eye

人間観と信頼関係のマネジメント・・・

マネジャーにとって最大のテーマは、人をどう動かすかになる。しかし、人は機械ではない。同じ指示を出しても、すぐ動く人もいれば、慎重に考える人もいる。強い責任感に動かされる人もいれば、人間関係や承認によって力を出す人もいる。だからこそ、マネジャーには「人は何によって動くのか」という人間観が問われる。“エドガー・シャイン”は、人間観の変遷として「合理的経済人」「社会人」「自己実現人」、そして「複雑人」という考え方を示した。

▼合理的経済人モデルでは、人は報酬によって動くと考える。社会人モデルでは、良好な人間関係が人を動かすと考え、自己実現人モデルでは、人は自ら成長し、やりがいを求めて動く存在とされる。さらに複雑人モデルでは、人によって魅力を感じる要因は異なり、それも単純ではなく多層的だと捉える。この最後の「複雑人」モデルが、今の職場には最もしっくり来る。なぜなら、同じ職場にいても、部下の年齢、経験、価値観、生活事情、キャリア意識は大きく異なるからだ。とくに小売・流通業では、正社員だけでなく、パート、アルバイト、多様な働き方のメンバーが混在しているので、全員に同じ働きかけをしても、同じように動くとは限らない。

▼この部下は何に不安を感じているのか。この人はどのような場面で力を発揮するのか。承認が必要なのか、裁量が必要なのか、安心感が必要なのかなど、一人ひとりの特性を見極めることが重要になる。しかも、それだけでは十分ではなく、部下との関係が深まっていく過程にも目を向ける必要がある。マネジャーと部下の関係性については、LMX(leader member exchange)と呼ばれる“リーダーとフォロワーの社会的交換関係の質”に関する議論がある。LMX理論では、誠実な対応、期待以上の成果、日々の信頼あるやり取りを通じて、関係の質が高まっていくという。その発展段階として、「他人」「知人」「成熟したパートナーシップ」という三つの段階が示されている。

▼最初は役割上の関係にすぎなくても、やり取りが積み重なることで、互いに信頼し尊重しあう関係へと進んでいく。成熟したパートナーシップの状態では、部下は単に命令に従うのではなく、上司の意図を理解し、自発的に協力しようとする。ここに、本当の意味での組織力が生まれる。マネジャーが目指すべきは、この成熟した関係であり、必要なのは特別なカリスマではない。約束を守る、話を聴く、困りごとに誠実に向き合う、努力を見ていることを伝える、必要な場面で支援する。そうした積み重ねが、信頼を形づくる。
人は制度や命令だけでは動かない。部下を動かすとは、相手を理解し、信頼関係を育て、主体的な協力を引き出すことだ。新時代のマネジャーとは、信頼を資本にして組織を動かす人だといえる。

2026/04/16