最高の人材がいなければ、最高のビジョンに意味はない

コロナ禍で改めて人材の大切さを感じた。感染拡大が続く中、ワクチン接種の優先順位を考えてみても、医療従事者、高齢者の次には、やはりエッセンシャルワーカーのはずだと思うが、職域接種は大企業から始められた。そのような状況の中での営業継続は、多くの苦労があったに違いない。小売業従業員のエッセンシャルワーカーとしての働きに感謝せずにはいられない。

▼幸いの事に、19都道府県の「緊急事態宣言」、8県の「まん延防止等重点措置」が、10月1日から全面解除された。菅首相も、尾身基本的対処方針分科会会長も、小池東都知事も、「段階的」を強調し、人々の行動制限をして様子を見ながら段階的に解除していくのだろう。

それは、少しずつ外食産業が、先ず蘇っていく。そして、SMなどの内食産業と中食産業は、これまでの特需の反動が少しずつ現出すると思われる。

▼特需での売上増の結果、2021年期の決算では、多くのSM企業が増収増益を達成している。コロナ禍の中で、地域社会から信頼される売場の安定性や確実性があったからだ。

ただ、ここで生み出された利益を、何に投資できるかがこれからの課題になって来る。

環境変化が激しい中では、簡単に他社に真似されない経営資源(リソース)を持つ企業が長期的な競争に勝てるというものだ。それは、恒常的に変化し、対応し続ける能力の差とも言える。環境変化に合わせ、ダイナミックに経営資源を組み合わせ、再構築し続ける能力向上の為の投資が大切になってくる。

▼人間の認知力には限界がある。認知できるのは、目の前のある一定範囲に限られ、その中だけで物ごとの判断をする傾向がある。目の前の課題解決に注力することになるので、成功すると「自分の立っていることは正しい」と認識し、疑念を持たなくなってしまうものだ。

小売業は、「100年に1度の転換期」と言われている。自分たちの目指す方向や潜在的な競合他社との競争に打ち勝つためのビジネススキル取得に投資する時だと思う。

(2021・10・16)