情報発信基地、始動しました。③

 AI技術が最も得意とするのは、明確に定義された問題に対する最も適切な解を膨大なデータから推論することにある。一世代前では、問題と答えを全て専門家の知識から覚えさせて問題解決を図っていたのだが、ディープラーニング技術の発達で、教えていない答も導き出すことが可能になったのだ。

▼IoTや5G、6Gの技術進展に伴い蓄積されるデータは、飛躍的に増大していくので、問題解決におけるAIの出番も飛躍的に増えるはずだ。ただ、AIに問題を与えるのは人間サイドの役割だ。また、現在の決め事が環境の変化によって適切でなくなった場合に「どうあるべきか」を考えて、新しいルールを作り直すのも人間サイドの役割になる。問題が明確で膨大なデータが入手できる領域はAIに任せ、私たちは、解くべき問題は何かを考え、決定する能力、つまり問題発見の能力を高めることが重要になるはずだ。

▼これまで、日本の多くのチェーンが「チェーン理論」武器に成長発展を遂げて来た。米国発と考えられるそれは、ある時はSafewayであり、Sears, RoebuckでありWalmart を研究してのものであったように感じる。いずれにしてもモデルがあったのだ。しかも業態というフレームの中で、あるべき姿(モデル)に近づく為の競争をして来たので、能力開発は、問題解決するスキル向上に重点が置かれていた。もちろん、基礎作業を遂行する意味では大切なのは言うまでもないが、今は状況に適応してその都度答えが変わる、ひとつとして絶対成功する方法など存在しなくなっている。このフレームワークに当てはめたら解決するといった単純なものではなくなっている。

▼身につけたいものは、具体的な話を整理し、抽象論に置き換え、そこにどのような前提があり、どのような因果関係があるのかを分析し、もう一度具体的な課題に戻して自分自身で考えをまとめる能力なのだ。コーネル大学RMPジャパンでは、経営の真理を追究、研究する経営学者と現場で活躍する受講(参加)者との接点の場を多く作ることに注力したい。

(2021・10・21)