変化する「人材」の概念

 ファミリーマートは無人店舗を2024年度末までに約1000店出すと発表した。しかも約3000アイテムを取扱うという。正確には、「無人店舗」ではなく「無人売場」である。これまでは、食品衛生法で衛生責任者の常駐を求める制約などがあったが、2020年に緩和された。人口減少で人手不足は今後も深刻さを増す。デジタル技術で店舗運営を効率化する動きが広がると推測される。

▼他のコンビニや小売店も店舗運営の効率化を急いでいる。セブン・イレブンはNECと組んで決済に顔認証技術を使う実験を進めているし、ローソンは、自分で商品バーコードを読み込む「スマホレジ」の導入を開始している。米国のAmazon.comが18年にレジを置かない「Amazon Go」を実用化し、シアトル、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨークで20店舗以上を運営しているのだが、新たにWhole Foods Marketで2022年にレジ無しの店舗2店を開くと発表している。Just・Walk・Outと呼ばれる無人決済システムをホールフーズで採用するのは初めてで、利用動向を踏まえ他店舗に広げるようだ。

▼これらの技術は、買物時間の短縮、新型コロナウィルスへの感染リスク軽減などの利点もあるので、新たな買物体験として定着すれば、競合する他の小売企業にも波及する可能性が高い。とすれば「チェーンストア理論」の組織運営の考え方が変わるであろう。チェーンストア理論は、産業革命以来、発展して来た工業型組織論への移行だった。本来は機械化・無人化すべきところを、やむなく人が実行するためのものとも言えなくはないものだった。このように考えるとこれまで進めてきた「人材育成」を見直す必要がありそうだ。「教育」のすべてについての転換が迫られているとも言える。

▼幸いのことに、店舗の無人化は、今のところファミマの場合でもまだ2~3年後と未だ余裕がある。しかし、こういうことは進展し始めたら一挙に進むと考えておくべきだ。

組織の考え方、教育のあり方、人材の概念を考え直し、大転換するのに、残された時間はわずかなのかも知れない。

 (2021・10・24)