日本型GMS業態は、ダイエーやジャスコは関西、ユニーは中京、イトーヨーカドーは関東と大まかな出店エリアをカバーすることになったが、ウォルマートのようにドミナント商勢圏を作ることは出来なかった。ただ、セブン・イレブンがそれを可能にしたのは、土地建物はフランチャイジーの負担するものだったからだと思う。
▼商勢圏を作り、面出店で店数を増やすことが出来ない以上、商圏を拡大するしかなかった。人口が増加し経済が発展する過程では何も問題なく成功を収めることが出来たのだが、環境変化で業績は左右される。1980~90年代、ウォルマートが「ハイパーUSA」を作り、いったん大成功を収めながら、4店舗を試験営業して全て閉店した。ダイエーもハイパーマートをある程度作った上、事業からの撤退を決断した。その理由は、巨大な店舗内をお客さまは思ったほど回遊せず、買い回り効果が弱かったこと、食品部門の売上が高く、全体の荒利益率が低かったこと、店舗投資が巨額で、多店舗展開に限界があったことなどの原因が挙げられているが、商圏を拡大し続けなくてはならない戦略面での課題が大きかったものと推測できる。
▼ウォルマートは、この試験営業の中で、食品が集客のカギであることを発見し、非食品とは異なるノウハウが必要な食品部門運営のノウハウを手に入れた。それは次の事業に生かされ、店舗面積をハイパーマートよりも縮小し、より小さい商圏で繰り返し来店性を高め、近隣商圏のスーパーマーケットの客を奪うことに成功した。これがスーパーセンターという事業になる。
▼ウォルマートは、ルーラル(地方)出身であるがゆえの「スーパーセンターという独自品揃え(部門揃え)」を実現し、広く多方からの集客を重視するのではなく、限定された人口世帯数の住民を、繰り返し来店する「カスタマー」創造戦略で展開して来ている。日本のSM業界こそ近隣商圏の「商圏の充実」に舵を定める必要がある。
(2021・10・28)