米国でマーケティングの話題に必ず上るのがZ世代ですが、興味深いことにコロナ禍での食料品購買でのオンラインシフトは、ミレニアル世代ほど大きくなく、アパレルやシューズ、家庭向けエンターテインメント、フードデリバリーに偏っていたということです。
▼さて、オンライン消費傾向ともう1つの大きな変化は、オムニチャネルの浸透にあります。リアル店舗がオンライン販売を拡大し、店舗内や店外での受け取りサービスを拡充する動きと、オンラインを主流としていた企業が実店舗を出店するという2つの流れが同時に進んでいるということなのです。特にアパレル業界では、ロックダウンで店内販売が制限され、店頭や駐車場での商品受取りニーズが急増しての混乱を解消するべくテクノロジー企業と組み、顧客が持つスマホの位置情報を活用、顧客が店に近づくと店側に通知が届き待たせることなく商品の受け渡しができるようなサービスを展開するなどオンラインとリアル店舗が協働して売上全体を伸ばすというモデル構築が進んでいます。
▼一方、既存の流通網を介さず、商品を消費者にECなどで直接販売するD2C企業の一部では、オンラインからリアル店舗への動きが活発化しています。米国訪問する際に話題となっていたD2C市場でした。2019年に資生堂が「ドランク エレファント」を買収するなどの話題にもなりました。当時70%程の市場増で推移していましたが、最近は20%程度の伸びになっているようです。有望市場には変わりはないですが、SNS上でインフルエンサーを活用した広告戦略だけでは通用しなくなり始めているのかも知れません。顧客との関係強化を狙ってリアル店舗を構えてのオムニチャネル戦略を採用し始めている様です。売上の大半をオンラインで生んでいるブランドであっても、顧客接点を維持拡大するにはリアル店舗を含めたオムニチャネル化が必要であるということになるのでしょう。
▼J.C.Penney、Neiman MarcusやLord & Taylorなど、コロナ禍で経営破綻に至った百貨店企業は、リアル店舗の売上激減によりとどめを刺された格好だが、オムニチャネル化に乗り遅れたことも原因のひとつになるのかも知れません。
(2021・11・2)