「米国小売業」:消費市場の変化とそれへの対応 ⑪

 コロナ禍、欧米の小売業でのイノベーションに関して、代表的なものを挙げると、チェックアウトシステムに関する革新、ネットスーパーに関するものなどのDX関連、商品開発ではレディミールキット、オーガニックなどのPB商品の革新があると思います。

▼米国SM最大手のKrogerもここ数年、ネットスーパー事業の強化のための積極的投資を行って来ました。その最たる例がCFC(Customer Fulfillment Center)の設置です。CFC のfulfillmentとは、直訳すると「遂行する」という意味になりますが、小売業では消費者がオンラインで商品を注文し、受取るまでに発生する業務全般のことを指すもので、CFCとは、受注、集荷、梱包、配送、販売、決済、返品、在庫管理、問い合わせ対応、顧客データ管理業務を行うものになります。

▼Krogerは、このCFCが21年4月に正式稼働したと発表しました。オハイオ州モンローにある約9380坪のCFCです。資本業務提携を結んだ英国Ocado Groupが持つAIやロボットなどの自動化技術をフル導入したもので、総工費約60億円をかけ3年越しにて稼働を開始したものです。約400人の人員で生鮮食品から日用品まで約5万品目の在庫を保管・処理する能力を持ち、24時間稼働するものです。

▼最大で1000台以上のピッキングロボットが稼働するセンターで、ロボット1台当たり50アイテムを最短3分でピックアップし、配送準備を完了するまでに5分程度で完了するとあります。CFCからは、400台のバンやトラックで半径140km圏内にある店舗や顧客宅に配送。配送車両は冷凍・冷蔵など複数温度帯に対応し、1台当たり20件分の注文商品を運搬できるということです。莫大な投資と時間をかけ本格稼働したわけですが、コロナ禍でECへの需要が急増しているのは周知のとおりですが、米国SM最大手のKrogerは、このCFCを武器にしてリアルとネットの双方で“勝ち組”企業になることはできるか興味深いところです。

 (2021・11・11)