コーネル大学RMPジャパンの講義の合間に、「日本の小売業は、企業独自の利益構造を構築するべきだ」と話をして来ました。中間卸売業の発達した日本では、どの企業も欲しい商品を仕入れることが可能なのです。結果、似たような品揃えになり、競争は立地の便利さと価格になってしまったのです。Marginという利益を得ることでした。
▼米国の企業の動きを見て見ますと、企業ごとに独自の利益構造を構築しているのです。この利益を敢えてProfitと表現させて頂いて来ました。例えば、米国の小売業はAmazon.comの配送インフラに対抗するため、各社、ラストマイル配送の革新にスポットライトを当てて来ました。ただ、利益面ではオペレーションが複雑で1配送当たりの積載量が小さいものですから、コスト削減効果はあまり期待できないようです。そこで、新しい取組みとして、コスト削減効果が大きい、倉庫内の移動や店舗間の移動に注目して、改革に取組む企業が増えているのです。
▼MFC(マイクロ フルフィルメントセンター)か、CFC(カスタマー フルフィルメントセンター)かの議論が巻き起こっているのは、前に述べましたが、「集中型」モデルが主流であったEC物流は、コロナ禍で在庫を顧客に近い拠点に分散配置する「分散型」の物流が脚光を浴びるようになりました。Amazon.comも傘下のホールフーズに加え、自前の店舗を展開し店舗に倉庫・配送機能を持たせているのです。
▼ところが、Krogerは全米の主要拠点にデジタル化されたOcado Shed(大規模CFCの通称)を建設することで、物流における上流で徹底的に効率と収益を追求する構えなのです。「分散型」では、配送センターで仕分けし、店舗別に運送され、店舗内の倉庫で従業員が納品作業をします。それを、倉庫から搬出し、陳列したものをピックアップし配達箱に詰めるのですから、手間や人件費、時間がムダになっていることは想像できます。この面で考えますと、Krogerこそが圧倒的な優位にあると評価する人もいるのです。
我が社は、どこに集中して、どんな利益構造を構築するかを明確にすることが、新しいProfitを生むことになるのでしょう。我が社に適した方法を推進することが重要になって来ました。ちなみに、日本のラストマイルでは、イオンがOcadoとの提携を発表していますので、各社の対応はどうなるのか興味深いところです。
(2021・11・20)