カインズ、東急ハンズを買収!

10月31日に東急ハンズ池袋店が閉店しました。この店舗は1984年に開店、1~8階に売場を構え、JR池袋駅から「サンシャインシティ」につながる繁華街に面しておりましたので、週末は多くの若者が訪れる人気スポットのひとつになっていた場所です。

▼東急ハンズは、新型コロナウィルス禍の収束を見据えた既存店舗の収益改善を急いでいるとの情報もあり、池袋店は老朽化が進んでいましたので、新宿店や渋谷店など他の主要店へ投資を集中するものと推測しておりました。ところが、「ホームセンターのカインズ、東急ハンズを買収」のニュースが流れたのですから本当に驚きました。

東急ハンズは1976年創業で、都心部を中心に国内外で86店舗を展開しておりますが、2021年3月期の連結売上高は前年比35%減の631億円、営業損益は44億円の赤字(前の期は1億8100万円の黒字)に転落していたのです。

▼東急ハンズは私にとって憧れの企業です。「多品種少量」の陳列で、豊富な知識を持つ店舗スタッフによるきめ細かなアドバイスを武器にファンを増やし、80年代に急成長したのです。「生活雑貨店」と日経新聞では表現していますが、困りごとを解決するために東急ハンズに行くというソリューション型の独自性の高い店舗展開をしているからです。

▼カインズは「ベイシア」を中核とするベイシアグループの1社です。成長著しい話題の「ワークマン」も同じグループにいます。ベイシアグループは各社の自主性を重んじて専門性を磨く経営で業績を伸ばし、2020年度に初めて売上高が1兆円を超えた企業です。そのカインズの初めての買収です。背景には、ホームセンター業界への危機感があるのでしょうか。巣ごもり需要で盛り上がりましたが、オーバーストアの状態で先行きは厳しいとも言われております。

▼カインズは、製造小売りによる安いPB(自主企画商品)を武器に19年度に売上高が4410億円となり、ホームセンター業界で最大手になりました。一方、東急ハンズの売上高に占めるPBの比率は全体の10%程度です。従業員のノウハウで魅力ある商品を仕入れられれば来店者を呼び込めるのですが、仕入れコストが膨らみ、価格面でも思い切った手を打てない面も生じていたのかも知れません。休業・時短勤務やインバウンド客の喪失、都心部の店舗が多く新型コロナウィルスの影響を受けやすかっただけの問題だったのでしょうか。業態こそ違えスーパーマーケット業態のこれからの戦略構築のヒントになりそうです。

(2021・12・29)