元日付の日経新聞のコラム欄、『春秋』に「元日らしい顔の小文をつづろうと頭をひねっている。(略)思い浮かぶ新年の情景が、いまひとつパッとしない。希望に満ちた2022年が降りてこないのだ」というフレーズがあった。新年を迎えて最初のコラム欄に、らしからぬ言葉が使われていたのだ。
▼オミクロン株の市中感染による拡大の行方が見通せぬせいだけでせいだけでなく、コロナ禍が日本の危機をあぶりだしたからだろう。デジタル化の遅れや多様性の欠如、教育システムの改革の遅れなど、これまで意識されてこなかった事実を突き付けられた格好だ。なかでも、30年間も給料が上がらない異常事態を知らされたことはショックで、日本生産性本部の調査では、日本の一人当たり労働生産性は、2019年はOECD加盟37カ国中、26位だった。主要先進7カ国で比較すると、日本は50年以上も最下位に甘んじているのだ。
▼どれだけ真面目に働いても給料が上がらない理由は単純で、企業の労働生産性が低いからだ。海外企業は、デジタル化を進めると同時に、働き方と組織の改革にも着手する。たとえば、以前10人働いていた作業を、デジタル化を推進して担当者1人で業務量をこなせるようになれば、生産性は10倍だ。これを対応するには、一定のアウトプットに関わる人数を減らすことが効果的な方法となるはずだ。
▼日本企業が本気で取り組めば、労働生産性向上は難しくない。ただ担当者の9割は失業することになるので、日本の経営者は人員削減に手をつけないでいる。例えば、セルフレジやスマートカートを導入しても、キャッシャーの人員はこれまでと同じ人員を確保しているとなると企業の生産性は低いままになってしまう。
▼日本人の生産性を上げ、給料を上げるためには、経営陣がまず動かなければ何も始まらない。間接業務のデジタル化やDXも、人員を減らして労働生産性を高めることも、すべて経営陣の判断と行動にかかっている。まず経営陣から21世紀型に生まれ変わる必要がある。構想力があり、システム思考ができる経営陣になるということを今年の目標のひとつに加えて欲しいと年頭にお願いしたい。
(2022・01・02)