コロナ禍は、日本のみならず世界が内包していた問題をもあぶり出した。経済の根幹である資本主義そのものが揺るいでいるようだ。特に、民主主義型の資本主義と権威主義型の資本主義が対峙する出来事が急に報道番組で取り上げられているように思える。体力低下が目立つ資本主義を磨き鍛え直す。その契機になる年になることを願わざるを得ない。
▼産業革命で確立し、世界に広がった資本主義であったが、1930年代の大恐慌では、危機に見舞われた。その時は、政府の需要創出を重視するケインズ経済学の登場で、資本主義は進化を見せる。しかし、70年代には政府の肥大化などが深刻になり、小さな政府に向けての改革、いわゆる新自由主義が広がった。そして、2008年のリーマン危機や今回のコロナ禍を経て、再び政府の役割を拡大しようという機運がある。ただ、多くの国が財政支出を無尽蔵に増やせる状況にあるわけではない。さまざまな課題が複雑に相互作用を始めている。
▼このような環境の下にあって、SM(スーパーマーケット)として、つまり食品小売業として「食の未来」についての考察を重ねておくことが必要だ。消費者と食生活の傾向について、これまでの推移を改めて振り返り、社会の変化や発展との関係を考察し、今後のトレンドを考えておく機会を作って頂きたいのだ。そして、食料生産の推移や、その背景にある消費者のニーズ、環境への配慮、資源保護についての現状。生命科学の新しい領域について、これまで以上に知って置きたい。SMだけでなく食品メーカーを含めた食品業界の歩みを確認しておきたい。人類の進歩にどのように貢献してきたのか、未来を切り開くために乗り越えねばならない課題は何かを整理しておくことが大事なことだと思う。
▼流通・小売業は、食品メーカーと協業して、世界で増え続ける人口に食料を提供することと、細分化が進む消費者ニーズを満たすことの両立を図らなくてはならない。流通・小売業で近代化が標榜された60年程前は、良いものをより多く提供することが目標だった。今は、持続可能性や資源保護、環境問題などの課題に取り組む必要がある。ミレニアル世代、Z世代の消費者は新しいトレンドに敏感だ。「暮らしの個人化」が進む中での対応を間違えるわけにはいかない。ここにSM業界の未来が懸かっているのだから、年明けの少し落ち着いた時点で業界の目標を整理をし、実現したい姿を改めて明確にしておくことをお願いしたい。
(2022・01・03)