「フードテック」への期待 ②

ネット産業などに比べると目立たないが、世界の飲食産業は着実な成長が期待されている。人間が生きるのに必要不可欠な商品を扱うので、その規模は極めて巨大なのだ。最新テクノロジーを適用して付加価値を高められれば、社会への貢献は絶大なものになるはずだ。

▼世界の主要な34カ国の飲食料市場の規模は、2015年の890兆円から2030年には1369兆円へと1.5倍に成長するとされている(農林水産政策研究所推計)。特にアジア諸国の伸びは顕著で、420兆円から800兆円へと約1.9倍へ拡大するとみられる。ただし、日本は、少子高齢化が進み国土も限定的なものだから、農業や水産業など食料の生産から加工、流通、販売に至るプロセスの中で、これまでの方法で生まれる価値の量と質が高まるような状況にはない。フードテックの活用によるフードチェーンの生産性向上と価値向上を図るべきなのである。

▼残念ながら、これまで、日本のフードテックに向けた投資は消極的だった。米国が9574億円、中国が3522億円、インドが1431億円、英国が1211億円の中で、日本は97億円に過ぎなかった(2019年)。最新テクノロジーの活用とは無縁の成熟産業と考えている傾向が強いのだろう。海外での関心は急激に高まり、EUの中では、植物・藻類・昆虫などの代替たんぱく質に関する技術開発を重要視し、米国ではバイオテクノロジーなど自国のフードテック分野での競争力に直結する技術を輸出管理対象にしている。

▼フードテックは、食に関するさまざまな問題が解決できる可能性があるという。先ずは、「食糧不足の問題」である。世界の人口は、2055年に100億人を超えると予想されており、深刻な食糧不足の問題を抱えている。食物生産の新技術や新素材などの開発が、食料問題解決の糸口として期待されている。「飢餓問題の解決」に関しては、食糧不足による飢餓に苦しむ人がいる一方で、先進国においては常に多くの食糧が廃棄されている実情がある。フードテックによる食材の長期保存は、世界規模で見た食糧バランスをとることができそうだ。「菜食主義者の代替品の製造」にも貢献できる。宗教的な問題や、動物愛護の観点、健康に配慮して菜食主義志向になるなどの理由はあるが、植物性たんぱく質による代替肉を生産するフードテックが注目されている。そして、「食の安全」や「人材不足の解決」などが期待できる。ただ、フードテックはお金がかかることが課題になる。例えば、太陽光に代わる光を作るための電気代や、雨水に代わる水道代がかかるし、食品開発にも多くの研究費などを必要とする。どのようにしてバランスするかが残る課題である。

(2022・01・10)