IT化で遅れた日本の復活は「消費主導」で!

コロナ禍は、等身大の日本を映す鏡となったのか、最近、「ニッポン沈没」的タイトルを目にすることが多い。他の先進国に比べ給付金を巡る混乱やリモートワークに移行できない職場環境などみても、「デジタル後進国」だったと認識せざるを得ないし、GDP(国内総生産)比で世界最悪の借金を抱えながら、「バラマキ批判」が巻き起こるほど財政出動を続けなければならないほど経済回復は弱いからだ。

▼経済誌『週刊ダイヤモンド』が2週間ほど前に特集を組んでいたが、経済成長率、株価の上昇率、教育環境・通貨の購買力、財政健全度などの面で、日本の国際的地位はさまざまな局面で没落しつつある。日本の一人当たりGDPは、40,690ドル(2019年)で諸外国との比較で26位、実質賃金ではすでに韓国にも抜かれているのだ。かつては、一人当たりGDPで主要先進国中1位だったのにだ。「世界競争力ランキング」(IMD:国際経営開発研究所)でも、1989年の調査スタート時は1位だったが、最新のデータでは31位になっている。

▼日本の地位はなぜ低下してしまったのか。経済評論家の加谷珪一氏は、「輸出主導型で戦後の日本経済は成長して来たのだが、全世界の輸出に占める各国シェアを見ると、80年代にはドイツと拮抗するまで順調にシェア拡大(8%超)してきたのに、90年代以降、急激に落とし3%台と低迷している。日本の輸出競争力が劇的に低下したことが生産性鈍化を引き起こし、これにより日本経済の凋落が始まっている」と解説している。90年代に何があったかと言えば、90年代の産業界を特徴づける出来事は、パソコンの普及に伴う世界的なビジネスのIT化なのだ。日本の半導体産業はDRAM(Dynamic Random Access Memory:記憶保持動作が必要な随時書込み読出しメモリー)分野での世界シェアは80%に達していたのだが、過去の成功体験から汎用機向けの高品質なDRAMにこだわり続けたため、パソコンの普及に伴い韓国勢や台湾勢にシェアを奪われたのだ。電機メーカーも従来型のハード偏重をやめられなかった。サービス産業も、ITを使った業務プロセスの見直しが実施されなかった。

▼90年代に発生したIT革命に乗り遅れ、インターネット革命でさらに格差が拡大したことが、日本経済が低迷する大きな要因になったことは間違いない。95年以降、日本におけるIT投資水準はほぼ横ばいで推移する一方、米国やフランスは投資額を3倍超に増やしている(OECD:経済協力開発機構 調査)。また、企業における人的投資のGDP比を国際比較しても、日本は諸外国の10分の1程度の水準しかなく、しかも90年代以降は減る一方なのだ。

日本には、1億人を超える国内市場が存在する。国内における消費を喚起してサービス業を活性化すれば、内需主導型で経済を成長させる道筋を見せることが出来るはずだ。

「チャンスの女神には後ろ髪はない」という、今のタイミングならまだ間に合う。小売業である私たちへの期待は高まるはずだ。

(2022・01・23)