回復傾向か? コンビニエンス業界動向・・・

コロナ禍の影響で人流が減り、既存のビジネスモデルに大きな影響を受けたCVS(Convenience Store)業界だが、「セブンイレブン・ジャパン」、「ファミリーマート」、「ローソン」のCVS大手3社は「小商圏化」と「デジタル化」をキーワードに新たな便利性創出に取組み始めている。1月20日に日本フランチャイズチェーン協会が発表した主要コンビニエンスストア7社の2021年の売上高は10兆7816億円だった。全店で前年比1.1%増、既存店では0.6%増だ。20年は新型コロナの影響で全店、既存店とも売上高は前年割れとなったのでハードルはそれ程高いわけではなく、19年の実績には及ばないが、生鮮食品やデザート、冷凍食品、酒類などが好調に推移し、プラスに転じたことになる。既存店客単価は3.2%増だったが、客数は2.5%の減少。特に12月の月次売上高は、既存店前年同月比3.2%増と3カ月ぶりに前年実績を上回った。クリスマスや年末年始商品が好調だったことに加え、おにぎり、弁当、ソフトドリンク、酒類、玩具などの動きがよかった。客数は0.03%の微減で5カ月連続のマイナス、客単価は3.2%増で7カ月連続のプラスとも報じている。

▼惣菜、日配品、冷凍食品、酒、日用品など家庭内消費商品を強化し、周辺住民の需要を取り込む動きが強まってきた。生活必需品をワンストップで買える品揃えにし、近くの住民に日々の買い物の場として利用される店舗にしていこうという小商圏型MD政策を開始した。セブンイレブンは、立地分類を、「都市型」「住宅型」「郊外型」にし、周辺住民の需要を取り込むための作業を進めている。ローソンも、個店ごとに商圏ニーズを調査、立地に拘わらずニーズがある店舗は日配品などを増やしている。野菜はすでに全店に置いており、地元の八百屋に棚貸しする形で品揃えを充実させた店舗も出現している。ファミリーマートも、日常使いの商品をワンストップで買えるようにするため、パウチ惣菜、日配品、冷凍食品を拡充している。また、生活雑貨でも新しい取り組みが出ている。ローソンが無印良品の商品を導入。セブンもダイソーの商品を北海道と神奈川の店舗約170店に導入。ファミマは「コンビニエンスウェア」を立ち上げた。

▼人件費の上昇も課題のひとつになるのだろう。ファミリーマートが「デジタル化」を軸に無人決済店の展開を始めたのも、労働力不足を見越してのことでもある。セブンイレブンも今年3月、スマホレジを路面店に拡大していくための実験を開始する。ただレジの削減や作業の省力化は、カウンター商材の販売・加工に人を振り向けて売り上げを伸ばすためでもあり、無人店を出す考えはないという。ローソンもセルフレジを軸にレジ業務の削減を進めており、50%強に高まった稼働率をさらに上げていく。ここも、接客ゼロの無人店を出す考えは持っていない。アプリ活用の販促も確実に効果を上げており、アクティブユーザーもこの2年間で2.8倍に急増しているという。そのアプリ活用の広告やクーポン配信も、購買履歴を分析して行うOne to One販促を開始。また店舗をメディア化する戦略を打ち出すなど発表している。デジタルサイネージを設置して、広告やエンタメ情報を配信するもので、毎月設置料を受け取れるという。

▼これらの動きの成果は、コンビニエンス業界復活の可否だけでなく、寡占が進み市場シェア9割超の3社の優劣も決定づけることになる。展開される日販引き上げ競争が勢力図をどう変えるかも注目点になる。コロナ下でも既存加盟店の日販を上げられなければ、コンビニ復活の道は遠い。日販引き上げに向けて宅配も活発化している。ローソンはウーバーイーツなどを活用して約500品目を届けるサービスを2500店に拡大。セブンイレブンのネットスーパーも、今期中に1200店になる見通し。25年度には全国の店舗で展開する計画を立てている。ネットスーパーとは、ステージの違いはあるもののSM(スーパーマーケット)に影響がないわけではない。まさに寡占3社の力量が問われ始めているが、SMとの競合度合いは更に上がるかもしれない。

(2022・01・24)