ここ数日、Trader Joe’s(トレーダージョーズ)についての報告をさせて頂いた。市場競争の激しい小売業界では、競合他社との差別化が何よりも重要となる。独自性や消費者の潜在欲求を先取りするような企画力が求められている。チェーンストア産業の利益構造を考える時、ひとつが商品開発による独自化を追求し、Profit(利潤:手数料の意味のMarginと使い分けたい)を実現することにある。
▼Trader Joe’sは、日本でも「トレジョ」と言われ慕われている。米国での店舗視察で欠かせない企業であり、受講生もお土産のエコバック、トートバッグを含めたくさんの買物をしてしまう店舗でもある。2019年度の推定売上高は137億ドル(1.5兆)。平均店舗面積は約1400㎡と通常のSM(スーパーマーケット)の3分の1程度でありながら、売場面積当たりの売上高はトップクラスという事になる。2019年の推定年商、推定総売場面積から見て、年間1万9467.42ドル(約210万円)/㎡の売上高になる。
▼7つの指針にあるように、独自のポジショニングを取っているのだが、成功に導いているのは、卓越した商品開発力という事ができる。EDLP(エブリデイ・ロープライス)戦略を貫き、セールは一切行わない。扱い商品アイテム数が約4000、一般的SMの約5万アイテムに比較して大幅に少ない。しかも、80%以上がPB商品(Private Brand・開発商品)で構成されている。
▼Trader Joe’sは、オーガニックや自然素材、フェアトレード商品を低価格での提供が柱ではある。人工保存料やフレーバー、GMO(遺伝子組み換え作物)、飽和性脂肪、MSG(うま味調味料)などを使わず、自然素材のみを使用している。中国からの食材の安全性が問われた時には、直ぐに中国産原材料の使用をやめる。12年には生存維持出来そうもない魚6種類の販売も中止している。そして、世界中を探検し、多くのアメリカ人があまり知らない食品を提供してきた歴史がある。近年は日常食の中から「誰も気がつかなかったおいしいものの発掘」「意表をついた商品企画」に注力している。まさに買物経験のコンセプトは「トレジャーハント(宝探し)」なのだ。売り方は、「試験的商品」や「季節限定商品」など数量限定商品を上手く投入し、「常に何か新しい商品を見つけることができる」という期待感と、「見つけたものは今買わないとなくなるかもしれない」という購入動機を創出している。そして、選択肢の少なさが、より購入しやすい、購入意欲が湧く売場づくりに繋がっているともいえる。
暫くは、商品開発とDX(Digital Transformation)が小売業の話題と言えそうだ。
(2022・01・28)