昨年10月、米国のフェイスブックが、社名を「Meta(メタ)」に変更した。SNSを軸に成長してグループ全体の利用者が36億人に迫るフェイスブックだが、企業体質や管理体制への批判が高まっていた。そんな中で、社名変更によってイメージを刷新し、仮想現実(VR)などの成長領域に注力するのであろう。新しい会社名は仮想空間「メタバース」に由来するものだ。この「メタバース」については、コーネル大学のダニエル・フッカー教授の10月のビデオ講義の中でも、まだ実現には時間がかかる「メタバース」であるがと断わり、メタバースに関するビデオを紹介してくれている。
▼日本経済新聞も『2030GameChange』(1月31日付 朝刊)で「2030年の世界、想像できますか〈メタバース〉私の分身、仕事も遊びも」と題して特集を組んでいた。世の中のルールや前提が大きく変わる所謂「ゲームチェンジ」の時代がくるというものだ。仮想世界で働き、買い物し、イベントに参加することができる。ゲームで使われてきた仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の技術を活用して誕生する新しい世界は日常生活の一部となるとある。コミュニケーションの在り方さえ変化する可能性があるとも語っている。技術革新や価値観のシフトの先に、どんな未来があるのか不安さえ覚えてしまう。
▼現状を見ても、EC(Eコマース)の重要性は、小売業界に身を置く者であれば、無視できない存在になったと言える。日本の小売市場全体に占めるEC比率は、2020年度の調査(経産省)で約8%、小売全体の規模から見て1割にも満たないものが、なぜここまでその存在を大きくしているのだろうか。食品はまだ3%台に留まっているのだが、これでも無視を決め込むことは出来そうもない。
米国のチェーンストア業界の歴史を見ても、破壊的革新でA&Pが中小小売やドラッグストアを駆使した。そのA&PもKrogerによって衰退し、WoolworthがKmartによって撤退した。KmartもWalmartに負けた。そして、Amazonに代表されるネット通販によりSearsが経営破綻している。WalmartもAmazonの追い上げと闘っているのだ。
▼既存小売業がネット通販などの新しい力に対応するためには、もう一度「店舗とは?」を問い、常に店舗機能の「再定義」をし続けることが戦略のひとつである。技術の発達やその利便性だけのアプローチではなく、消費者や買い物行動そのものの変化に気付く必要がある。消費者の変化、買い物の変化と、ECが担う新たな役割について、リアル店舗サイドから再考したい。
(2022・02・04)
