「DX-CO・OPプロジェクト」の推進力

日本生協連(日本生活協同組合連合会)は、2020年6月に次の10年を見据えて「2030年ビジョン」策定した。このビジョン、2年間にわたって組合員を中心に全国1000人以上の参加者が、「生協のありたい姿」を語り合い論議を重ねる中で作成されたものと聞く。当然、SDGsの考え方をベースとしての生協の目指す姿が描かれている。

▼この「2030年ビジョン」の中で掲げている「ICTによる事業活動のデジタル変革の推進」に向けDX(Digital Transformation)プロジェクト「DX-CO・OPプロジェクト」が設置され、全国の生協で共通に利用できる基盤構築を目指す取組みが始まった。代表的な施策が、コープ東北サンネット事業連合(宮城県)、コープデリ連合会(埼玉県)、東海コープ事業連合(愛知県)との4者共同で、全国の地域生協のDX推進を目的としたもので、デジタルを活用した実証実験を重ね、成功例を生協全体に広げていく試みを開始している。

▼これまで世帯ごとに管理していたものを、個人ごとのID管理に変え、1人ひとりにあったサービス提供を実現する仕組み構築を開始する計画や効率的な配達により職員の負荷を軽減することを目的に、AIにより配達コースを最適化するシステムの実証実験を行うなど組合員と配達担当者を巻き込んだ取り組みを推進している。すでに実験を終えて水平展開を始めた事例もある。みやぎ生協で運用開始したWebサービス「CO・OP chef」は、好みのレシピを選択すると、必要な食材が自動でカートに入りまとめて宅配で注文できるという仕組みで、献立を考える負担や注文作業時間の軽減につながると好評だった。それを東北6県の地域生協へとサービスを拡大している。激化する食品宅配市場のなかで生協は“王者”として君臨し続けることができるのか。この生協のDXは重要な転換点となりそうだ。

▼そして、システム開発手法を見直し、スタートアップ企業とも連携して短期間で先ずは成果物を一部エリアに導入、試行錯誤を重ねながらシステムを進化させていく「アジャイル型」の開発手法に舵を切っていることが、スピーディに進んでいる大きな理由のようだ。近年のWalmartの組織運営の考え方もこれだと聞いている。

「アフターデジタルの世界では、世の中の変化に迅速かつ柔軟に対応し、サービスを適応させていくことが求められる」とプロジェクトリーダーを務める河野敏彦氏(コープ東北サンネット事業連合常務理事)は述べており、事業推進や組織風土そのものの変革も生協全体で進めていきたいとしている。

(2020・02・13)