コーネル大学のミゲル・ゴメス教授、ダニエル・フッカー教授とのディスカッションの時、教授から「日本の小売業の現状での課題は何か」の質問があった。小苅米 秀樹さん(1期修了生・株式会社ベルジョイス 代表取締役会長)が口火を切ってくれた。人口減や生活の変化などお客さまの質的、量的変化に関すること、小売業の生産性の低さや商圏内における競合状況など、実に適切に説明してくれた。
▼米国での小売業の課題は、サプライチェーンに関すること、働き手が不足していること、独自フォーマットの台頭などに関する話が出た。Aldiに関する話題もあった。Aldiに関してだが、今年150店舗の新規オープンを計画している。実現すれば生鮮品を扱うSMの店舗数において、統一店舗名ではWalmartに次いで2番目に大きなチェーンとなる。店舗見学などでよく理解されていると思うが、400坪前後の売場面積に約1,500アイテムと絞られた品揃え、90%は自社開発の商品だ。それらはNB商品と比べて最大60%も安いという。しかも開発商品は、健康的な原料で作られた「Simply Nature」、グルテンフリーの「Live G Free」、グルメ食品の「Specially Selected」、植物由来の「Earth Grown」などの確立したブランドを持つ。また「MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)」の認証マークや国際フェアトレード認証ラベル等を用いることで、サステナブルに貢献していることの訴求もある。品質保証となる「Adli Twice as Nice Guarantee」制度も人気だ。このようなLimitted Assortment Storeや Dollar Storeなどの小型店フォーマットの動きが良いようである。
▼小型店と言えば日本でも「まいばすけっと」の業績が良いようだ。イオンリテールのひとつの事業として開始、途中で分社化したが、1号店出店から約16年、法人設立から10年で店舗数を4ケタの大台1,000店に乗せた。21年2月期決算では、対前期比16.4%増、売上高は2000億円の大台を突破するという。首都圏では影響力を持つ存在である。では、これからは小型店なのかというと・・・
▼小苅米会長は、ディスカッションの席できっぱりと話された。「大きな商圏では、コンビニエンスストアではないが小さな店のほうが生き残りやすい。しかし、人口10万人かそれ以下の小さな街であれば、その人口に十分に見合った大きな店をつくればライバルは出て来にくい。そうした規模で出店したほうが、安定的に利益が得られる」というのだ。カリキュラムにある「ゲーム理論」ではないが、相手に先んじて動くことがゲームを有利に導くことがあるということなのだろう。
(2022・02・19)