イトーヨーカ堂に関する話題で、セブン&アイ・ホールディングスが投資ファンドから売却を求められている件に関して、これまでの再生策が上手くいかなかったのだからファンドの言い分は理解できなくはない。それでも「ヨーカ堂を続けて欲しいと願う」という内容をこの欄に書いた。これに関しても連絡を頂いた。目を通して頂けている事に感謝申し上げる。
▼連絡くれた方は、「2000年頃、日本最大の小売業だったダイエーが過剰債務で経営危機に陥った時に、外部からの再生計画案があったという。その内容が、ダイエーを身売りして、傘下にあるローソン、ダイエーオーエムシー、リクルートを残すという内容だった。ダイエーグループは、資本が複雑だったので、この案は放置されてしまったと推測できるし、何よりも創業家への忖度が強かったのではないか」というものだった。「ここにある再生計画案で新しいダイエーを作っていたら、ユニークで活力ある企業になっていたかもしれない。これでも、ヨーカ堂を続けて欲しいと願うだけで良いのか」との詰問だった。
▼ダイエーは、傘下の企業を売却する道を選んだ。その後、紆余曲折を経てイオンの傘下となった。そのイオンも、祖業となる総合スーパー(GMS)の再生に手を焼いている。グループの足を引っ張っているのはGMSであり、セブン&アイと同じ構図でもある。
戦後の混乱期に戸板1枚ほどの場所で衣料品を販売していた羊華堂。戦後の苦労や零細な衣料品店時代のことを知る人は、もうほとんどいない。ヨーカ堂はセブン&アイに遺しておきたいDNAなのだが、数年前に大株主になった投資家には必要ないのかも知れない。ただ、ヨーカ堂の創業時の苦労を、伊藤雅俊氏から聞かされ続け、醸成された「誠実」、「謙虚な姿勢」と「お客様への感謝の気持ち」がセブンイレブンを成功に導いた側面がある事は間違いないはずだ。それほど大切なDNAを持つヨーカ堂をここまでの窮地に追い込んでしまった「経営陣には責任がある」はずだ。
▼こんな経営責任を議論している時、矢作敏行先生(法政大学名誉教授)からメールを頂いた。先生は、世界に通用する優秀企業がまた1社、日本から消えてしまうのではとの懸念をお持ちだ。セブン&アイの海外コンビニを軸とした成長戦略への疑問を持たれていた。世界の有力小売企業がオムニチャネル戦略のビジネスモデル構築競争を展開するさなかに、海外の中堅コンビニを買収し、120億㌦(約1兆3000億円)もののれん代リスクを長期にわたって抱え込む必要があるのか、その結果、オムニ化に必要な投資余力がなくなっているのではないかという内容であった。
10年、20年の長期戦略として見た時、コーネル大学RMPジャパン修了生の皆さんはどう考えるのだろうか。矢作先生の指導受けながら、ケーススタディとしてリアルにディスカッションできる日が一日も早く来ることを願うばかりだ。
(2022・03・14)
