新しい会計年度を迎え、何か学びたくなる時期だが、ソフトバンクは約1万8000人の全社員に、人工知能(AI)や統計学の実践的なスキルの習得を求め、講座や研修を用意すると日経新聞が伝えていた。データを利活用できる人材を底上げすることが目的のようだ。小売業界でも、有名なのは「ワークマン」で、高度なAI分析ツールではなく「Microsoft Excel」を利用したデータ活用を浸透させて、全従業員が自らExcelでデータ分析してビジネスを判断・行動する「エクセル経営」を実践してきた。
▼ソフトバンクも、定義や自社の活用事例を知る入門編、機械学習などデータの分析手法を理解し、技術職以外がAI関連の企画を推進する手順も学べる基礎編で構成している。統計学では、相関・回帰分析などデータの関係性を調べる手法を理解し、表計算ソフト「エクセル」で実践する講座と研修も開設している。職種とは別にAIや統計を使える能力は最低限として身につけてもらうというものなのだろう。コーネル大学RMPジャパンでも、統計学の入門をプログラムに設定しているが、なんだかんだ言っても難しい講座のひとつである。
▼統計学的は、ポイントを押さえ、あまり本質的でないところに拘らなければ、誰でも確実に理解できるという。「データを正しくとる」、「データの意味を読み解く」、「確率から判断する」、「数字で説明する」、「少ないデータを効率よく活用する」などを主体に、公式類は表計算ソフトにまかせるのが良いようだ。コロナ禍は、結果的にビジネスのデジタル化を加速させた。この過程で、「変化に対して柔軟、臨機応変に対応する能力」が重要視されてきている。絶え間なく変化し、複雑化を続ける環境に対して臨機応変に対応するための“判断力”“行動力”を強化することが大事になって来ている。商品やサービスの多様化、法規制などのルールの複雑化があるからだ。
▼求める能力が変化すれば、重視するKPIも変化するはずだ。早期のリスク検知と低減、生産性向上とコスト効率などは、これから重視されるKPIとなる。過去のデータを集約的にまとめてビッグデータに仕上げ、そのデータを分析して「未来」を予測するのではなく、AI的な、過去のではなく現在、たった今起きた事態のデータを分析して、有り得る「未来」を複数予測する訓練が必要になるはずだ。小売業の現場こそAI的なアプローチが必要と考えられる。既に手元に用意されているデータを活用しての行動を期待したい。
(2022・03・29)