小売業は経営戦略を再定義する必要があると述べたが、オーバーストア状態が急速に進んでいるからだ。しかも、業態(フォーマット)ごとに同質化した企業は革新性を失い、気づけば、後発フォーマットに侵略されていることが多い。客層が広い高購買頻度品、つまりベーシックアイテムの取り合いでは、マクネイヤー教授の説いた「小売の輪理論」どおり、先行フォーマットの弱点を突いて成長する後発フォーマットのほうが有利で、フォーマット間競争の勝者になりうることが多い。
▼日本リテイリングセンター(ペガサスクラブ)は、年商50億円以上の小売企業統計を毎年、調査し発表している。昨年の秋に集計したものを見ると、集計企業数はいずれのフォーマットも毎年減少している。その一方、1社当たり店舗数は増加中である。フォーマットごとに寡占化が進行しているからで、この傾向は年々顕著になっている。ところが、寡占化が一番遅れているのがスーパーマーケット(SM)なのだ。年商50億円以上の企業が395社もあり、1社当たりの平均保有店舗数は37店しかない。ドラッグストア(DgS)の1社平均283店舗と比べると違いが良くわかる。
▼寡占化が遅れている理由は、食品の購買頻度が高いからだ。しかし、SMやコンビニエンスストア、DgSはもちろん、総合スーパーも100円ショップやHCさえも食品を扱っている。客層が広く購買頻度が高いため、扱えば売れるからどんどん拡大して来た。そこにネットスーパーが割り込み、新たな業態の便利さでお客の支持を獲得し始めている。これまで出来ていた他のフォーマットとの共存も限界である。どのフォーマットも売場販売効率は下降の一途を辿っているので深刻だ。SMだけが売上高365万円(坪・年間)と米国SM企業の1.5倍と高いのだが、労働生産性は年間696万円と米国の半分しかない。
▼日本の小売業界は、フォーマット間競争が激化しており企業の淘汰期を迎えている。どのフォーマットも同じような食品と高購買頻度の非食消耗品を扱っているので、同一フォーマット内の同質化だけでなく、異フォーマットの商品構成も同質化しているのだ。結果として、フォーマットの特徴が出せず、安さだけがお客の評価の対象になってしまっている。
自社のグランドデザインを明確にする、あるいは再確認をして、企業発展の原動力となりうるべく経営戦略を転換するべきと思う。残された時間は、あまりないのかも知れない。
(2022・04・09)