Amazon.comがレジレス店舗「Amazon Go」を出店してから4年が経つ。最初は、トリッキーさが先行し、設備にかかるコストも高そうで、一時的な話題に終わると思っていた。ところが、さまざまな企業がレジレスシステムの開発競争でしのぎを削っている。欧米の小売店でのレジレス化の加速だけでなく、日本でも動き出している。
▼米国での話題ではないが、Aldiも、ロンドン市内グリニッジに「Aldi Shop & Go」を出店していた(22年1月)。店舗面積は約150坪と通常店舗の半分のサイズで、米国のレジレス開発企業のシステムを採用しているという。英国内でも、既にTescoやSainsbury’sがレジレス店舗を出店しているという。ただ、ハードディスカウンターという店舗投資を徹底的に抑えるはずの業態が出店するのは珍しい。品揃えは通常の店舗とほぼ同一であるが、アルディ・ファインズ(週単位で展開される催事売場)は設置されていないとレポートがあった。
▼本家本元の「Amazon Go」は、シアトルからクルマで約20分の場所に、初の郊外型店舗として出店するとの発表があった。こちらは、店舗面積は約180坪で、これまでの約3倍とのことだ。これまでは、ニューヨーク、シカゴなどの大都市でビジネスパーソンがターゲットだったが、郊外の自宅で勤務する人々を新たなターゲットとする要素を付加するのだろうか。AmazonのJWO(Just Walk Out)は、「Amazon Fresh」にも「Whole Foods Market」にも実装し始めている。これを武器に既存のSMチェーンと戦い、可処分所得の高い都会的ライフスタイル層を囲い込むという戦略になるのであろう。
▼米国ではすでにコンビニエンスストア(CVS)業態を中心にレジレス化が進んでいるが、その背後には開発企業が続々と登場しているということになる。重量センサーや入退出ゲートを必要とした「Amazon Go」の方法だけでなく、天井部に細長いレールを設置し、そこに多数の小型カメラを埋め込み、このカメラとコンピュータービジョン、機械学習を使って商品の動きを分析、利用客に課金するというシステムなど新しい方法が開発されている。全体的には、まずは小型店の多いCVSからシステムの導入事例を増やして知見を貯め、その後にSMにも導入領域を広げるという流れのようだ。導入・運営コストを下げる試みも増えている。初期のコストは1店あたり100万ドル以上掛かったようだが、現在多くのレジレスシステムは10~30万ドルでも稼働が可能になっているらしい。人件費の最適化、万引きやレジ作業上のミスの削減などのメリットがある。消費者にとっても利便性は高い。今後、わが国はどう動いていくのであろうか。
(2022・04・10)