1月16日から3日間、毎年恒例のイベントである「NRF(全米小売連盟)2022ビッグショー」がニューヨーク市内で開催された。コーネル大学RMPジャパンプログラムの講師である大島 誠先生が先生主催のウェビナーの中でレポートしていた。世界中でオミクロン株感染ピークだったこともあり、参加者は例年の4割程度で、1万5000人以下だった様子。同じような環境下で開催された日本の「第56回スーパーマーケット・トレードショー2022」の集客力の高さに改めて驚いた。(3日間、42,885名)
▼大島先生によると、講演のキャンセルも目立ったが、初日の基調講演は大ホールが8割方埋まる盛況ぶりで、コロナ後の方向性を見極めたいという小売業関係者の意気込みが感じられたという。
食品小売業に関するもので目を引いたのは、昨年の春頃からニューヨークやボストンなど人口密度の高い都市には、ヨーロッパで先行して急成長したウルトラファースト配送を展開するスタートアップ企業が、次々と米国に進出している。その市場規模は米国だけでも昨年末で200億~250億ドルと推計されている。この、ウルトラファースト配送とは、小型倉庫であるダークストアを一定の地域に多数展開し、自転車、オートバイまたは徒歩で10~15分で配送するものだ。
▼これらの企業の成功要因について次の3点をあげていた。それは、①顧客に対応した商品展開(ダークストア単位の品揃え)、⓶インスタント配送、③オペレーションの効率化だ。特にオペレーションの効率化に関してだが、狭いダークストアの中では、品揃えは時間帯でも変えなければならないため、正確な需要予測が必要となる。この需要予測にAIを使い、地域・ダークストア・棚単位で緻密に実施し、生鮮食品を含めたサプライチェーンと在庫管理をAIで自動的に最適化を図っている。結果、食品廃棄を最小化し、ピッキング作業および配送体制も最適化されているとのことだ。ただ、高コストなサービスであろうし、ネットスーパー市場との競合にさらされる点で、一時的な成長と危惧しているが、サプライヤーや既存小売業との提携によるネットワーク構築を検討している様子だ。注目したい動きになる。
▼そして、メタバースに関する企業の動きも多く、ラルフローレン社のCEOも「メタバースと新たなデジタル世界には商機を感じている。その理由は、消費者の関心が増加していることで、若い顧客獲得のチャンスとなる。そして、ラルフのビジョンと重なるからだ。私たちは夢を与えるビジネス、違う世界をクリエートするビジネスだからだ」と述べている。早くも、Digital Transformation(DX)の次のフェーズを示唆する動きも出ているようだ。
(2022・04・11)