「成城石井」プライム市場上場へ・・・

日本経済新聞が、「ローソンは完全子会社の成城石井を2023年度までに東京証券取引所に新規上場する方針を固めた」と報じている。まず、原昭彦さんに「おめでとうございます」とお祝いを申し上げたい。代表取締役社長の原昭彦さんは、コーネル大学RMPジャパンの第2期生で、修了生の近況報告コーナー(Cornell RMP Japan Alumni)にも投稿頂いている。2010年9月1日に代表取締役社長に就任してから12年間、会社の価値創造を続けた結果である。現在、首都圏を中心に約200店舗を展開しており、22年2月期の決算(連結)は、営業総収入1092億円(前期比6%増)、純利益は73億円(同13%増)で、ローソンの子会社の中でも稼ぎ頭なのだ。

▼ローソンは、14年に約550億円で全株式を取得した成城石井なのだが、プライム市場への上場を目指し、年内にも東京証券取引所に上場を申請するらしい。ローソンは、「企業価値向上に向けて様々な検討を行っている。現時点で決定した事実はない」とのコメントを発表しているが、持ち株比率を50%未満に引き下げる方向での検討に入っているらしい。「上場時の時価総額は2000億円を上回る可能性もある」とも伝えられている。

▼SM業界も、コロナ禍を切っ掛けに近未来戦略を明確にする必要に迫られている。戦略ポジショニングの見直しが必要なのだが、選択のひとつに「圧倒的な強さを持つ食品産業(外食も包括)企業を目指す」方法があると考える。他を圧する専門性と独自性を獲得することになるのだが、その為には、独自のサプライチェーンを構築する、製造業・卸売業の機能、輸入調達のソーシング機能を獲得することが必須条件になる。このように考えると、自社工場で作る高品質の惣菜や、プライベートブランド食品に強みを持ち、レストラン機能、宅配サービスの展開などを進める成城石井は、まさにこのモデル企業なのだ。上場する事で独立性が高まれば他のSMとの再編も進めやすくなるだろうから、更なる成長に繋がると期待も高まる。

▼ローソンサイドの動きから見ると、SM業界でも有数の高収益を上げる成城石井は「虎の子」ともいえる優良子会社だ。その企業の出資比率を下げる決断をするというのは、市場の飽和や同質化への危機感を強める業界の苦悩は、思っている以上に深刻ということにもなる。24時間営業や立地などの利便性で支持を集めてきたコンビニエンスストア業界だが、商品やサービスの同質化が進み、品揃えも似通って個性を打ち出すのが難しくなっている。株式売却で得た資金は、株主還元やコンビニエンスストア事業への投資、マーケティング施策に向けられるのであろう。これまで以上にブランド戦略の重要性が高まっているのだろうから。

(2022・04・16)