日本経済新聞の『私見卓見』欄に早稲田大学研究院准教授 佐々木泰行氏が「小売業はいつまで古い知識・知見、成功体験にしがみ続けるのかと言いたい」との内容で掲載されていた。佐々木泰行氏は、北大卒業後、野村総研を経て幾つかの証券会社を経験、リーマンブラザーズ証券勤務時代に会社が破綻して野村證券へ移籍したという経歴の持ち主だ。
▼佐々木泰行氏は、この記事の中で次の様に述べている。近代的小売業の発展は、1948年に倉本長治氏が商店主を教育するため業界誌「商業界」を設立。62年は渥美俊一氏によってチェーンストアの研究団体「ペガサスクラブ」が誕生した。商人たちは近代的な商業や経営手法を学び、海外も積極的に視察した。米国などの豊かな消費生活に驚き、日本の生活者が享受できる世を夢見た。この過程で、個人商店のみだった生鮮食品の販売も、科学的に鮮度を管理する手法を生み出し業界で共有したことでスーパーマーケットができた。店舗運営の合理化を進め、卸売業との強固な協力関係も築いた。小売業は知恵を絞って多くの問題を解決し、「豊かな日本の消費生活」を提供してきた。
▼「それが、60年以上たっても多くはこの時代の技術と知識に固執している。志を持つ革新者だった小売業が今、次の革新に出遅れている。日本の小売業が今後も豊かな生活を支え、高い収益性と革新で社会に貢献するには、新たな道を進まねばならない。それは海外の小売業のまねではなく真剣に自分の顧客と向き合い商品とサービスをどう提供するかを考えることだ。今こそ小売業は栄光の過去に「サヨナラ」を言う気概が必要だ」というものだ。
▼米国小売業の動きを見るとアジャイル(機敏)さが重要と痛感する。Amazon.comは、話題になって来た「Amazon books」などのリアル店舗(事業)のいくつかを閉店するという。これ程の動きを、われわれの業界が直ぐに出来るかと問われれば難しいだろう。ただ、昨年の夏以降、各社の売場づくりの革新は目を見張るものがある。
われわれはコロナ禍において、あらゆるものが連鎖し、それらの相互作用によって社会は成り立っていることを再確認した。自社の繁栄だけを願うのではなく、業界と業界に関わる企業群を全体一つの組織と見立て、連携して新たな道を進める事が大切になって来ている。購買履歴などデータ分析に基づく需要予測・在庫管理の最適化、ロボティクス活用による生産性向上を目指すことが、「次の便利で豊かな消費生活」の鍵になるはずだ。
(2022・04・24)
