成長部門「惣菜」への期待・・・

2020年には、コロナ禍の影響でスーパーマーケット(SM)の需要が急伸したのだが、惣菜部門だけは取り残された感があった。しかし21年になり他部門が反動減に見舞われる中、SM業界3団体の統計調査でも明らかなように、惣菜だけが既存店で前年比4%増となっている。SMの成長分野が復活した印象だ。仕入原価や光熱費などの上昇が続く中にあって、荒利率の高い惣菜に、収益面からの貢献も期待されている。

▼2021年10月にオープンしたヤオコー和光丸山台店だが、過去最大規模の売場面積を持つ惣菜展開がなされている。「主力単品の再強化」と「新たなカテゴリー創出」に挑戦している売場だ。唐揚げの「幸唐」ブランドの拡充やローストビーフを使用した商品配置している惣菜部門。「生サーモン入り!やみつきポキ丼」「お寿司屋さんのおつまみ」などの寿司部門。そしてベーカリー部門は「店内手作り!プルドポークバーガー」や「パイ」、「タルト」といった新たなカテゴリーに挑戦している。ガラス越しに見える厨房にはプレッシャーフライヤーなどの新たな調理器具の導入や増強が図られている。また自社工場の活用も見逃せない。

▼記憶違いもあるかも知れないが、惣菜強化の転換点はヤオコーの第4次中期(03~05年度)経営計画時の「川越南古谷店」開店であろう(南古谷店はその後2度にわたる大改装を経て今日に至る)。この時の中計のテーマは「ミールソリューションの充実と惣菜強化型店舗」にあった。惣菜強化といえどもその具体的方法が見いだせずにいる中で、惣菜部門を分社化して突出させ、会社全体のけん引役を負わせたことにある。惣菜会社名「三味」(代表取締役社長小平昭雄)は、今日のヤオコーの惣菜部門を形づくった。

▼三味の政策のひとつは「商品力強化」で「コア商品のブラッシュアップと専門店化」であった。そこで開発された「手握りおはぎ」は、当時ヤオコーの代名詞にもなり、ブランド化したことはエピソードとなっている。もうひとつは、部門運営制度の確立であった。店舗の運営指導の体制確保と指導方法の確立。そして教育制度の体系化とその運用である。店舗で見える部分はすぐ模倣されてしまうが、企業の政策は容易に見透すことができないし、模倣できるものでもない。何よりも確立までの時間がかかることでもある。施策を通して体質化し、企業文化にまで高めていくことが重要なのだ。店頭での高いパフォーマンスを実現し、チェーンオペレーションを構築することは容易ではないが、これをやり遂げる力の醸成には「独特の教育方法」が誘起する。「チェーンストアとしての個店経営」の根源は、ここにあると思えるのだがどうだろうか。

(2022・04・29)