経営革新とグローバル企業化と・・・

日本経済新聞「Opinion Deep Insight」欄に編集委員の中村直文氏が書いた記事が掲載されていた。「セブン、外国人が社長になる日」というものだ。企業の経営革新とグローバル企業化に関してのものになる。背景は、セブン&アイHDが、株の4.4%を保有(21年5月時点)する投資ファンド、バリューアクト・キャピタルの提案を受け入れて、取締役の過半を社外人材にする動きがあったからだ。勤務先として10年間という短い期間であったが、お世話になった企業のことで、タイトルがとても気になった。

▼セブン&アイHDといえば、鈴木敏文さんの二番煎じを嫌い、誰もが反対するような事業で成功を収めて来た企業である。40年近くも前になるが、「現場に出たことがない」を自慢話のようにしていたが、商売(商品経営)という点では「アウトサイダー」だったのかもしれない。その代わり「企業経営」の面での才覚は驚くほど高かった。

当時は、「会社の利益の源泉はお客さまの買い物金額から生まれる。一番、偉いのはお客さまや地域の皆さんなのだ」という創業者である伊藤雅俊さんの考えのもとで社員は育てられて来た。この商品経営の理念に裏打ちされた企業文化があったからこそ、経営革新を重ね成功発展して来たのだ。企業の組織図も、一番上にお客さまが書かれている逆三角形になっている。その企業が、今、変わらざるを得ない状況を迎えているのだ。

▼些細な事だが、記事の中にある「創業者の伊藤雅俊氏によるイトーヨーカ堂の業務改革、鈴木敏文氏が主導したセブンイレブンの導入など・・・」の表現は厳密に言えば間違っている。「外部から招いたサラリーマン経営者の鈴木氏を絶対的なリーダーとして・・・」のニュアンスも違う。業革もセブン-イレブンも、伊藤さんの容認のもとで、鈴木さんが手腕を振るったのだ。特にセブン-イレブンを立ち上げる際には、松下幸之助氏に相談するなどして伊藤さんが決断したのだ。それでもイトーヨーカ堂に負担を強いることの無いように、個人の負債で出資比率を高めて準備したのだ。また、鈴木敏文氏は、外部から招かれたわけではない。東販を辞め、中間入社でイトーヨーカ堂に転職しただけだ。鈴木氏は、ご自身の力でトップの座まで上り詰めたのである。

▼米国のWalmartだが、サム・ウォルトン以来の経営鉄則を今も守り、人材教育を徹底している。創業一族は今も株式を保有している。創業者のDNAがきちんと伝わっているからこそ、50兆円を超える企業になっても成長を続けている。組織の風土改革も欠かせない。

日本の小売業の海外戦略は、これまで上手とは言えない。スターバックスやマクドナルドのようなグローバル資本になるためには、これまでとは違った戦略、トップの要件が必要になるのだろう。

22年2月期、米国セブン-イレブンの営業利益が日本のセブン-イレブンを始めて超えたという。グローバル展開という面からセブン&アイHDのこれからの動きは、日本企業にとっての実験モデルになるのかも知れない。

(2022・05・07)