日本小売業界の首位が10年ぶりに逆転した。2012年2月期から10年間、小売業界で営業収益トップの座にあったイオンを、2022年2月期決算でセブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイ)が抜き返した。連結営業収益は、セブン&アイ8兆7497億円、イオンは8兆7159億円。久々のトップ交代劇が起きた。
▼イオンの営業収益は前期から1120億円増えた。従来予想の8兆6200億円より上振れしたのだが、セブン&アイの伸びがそれを上回った。セブン&アイは2兆9830億円増えたのだ。なんと51.7%も増えたことになる。米国コンビニ「スピードウェイ」をM&Aによってグループに組み入れたことでこの増収を確保したことになる。セブン&アイは勢いに乗って25年までに年平均20%以上の伸びを計画している。来期9兆6530億円を見込む。一方、イオンも9兆円の大台を狙っている。営業利益では常にセブン&アイがイオンを上回っており、この期も3876億円(前期比5.8%増)と、イオンの1743億円(同15.8%増)の2倍以上だった。
▼セブン&アイが傘下に入れた「スピードウェイ」は、米国コンビニエンス業界3位の規模で、約4000店舗を展開するガソリンスタンド併設型コンビニエンスストアである。トップのセブン-イレブン・インクと3位のスピードウェイの統合は盤石の地位を固めることとなった。買収費用は総額約2兆4000億円、ただし実質の支払い価額は、店舗のリースバック、ローンの活用や節税効果などで1兆円強との報道解説もあった。いずれにしてもこれほどの大型のM&Aを行った背景には、総合スーパー事業や百貨店事業などの停滞が挙げられる。コンビニ事業が営業収益全体の69.4%を占め、海外のコンビニだけで59.4%の構成比である。「スピードウェイ」をグループ化する前から既に40%の構成比となっていた。現時点のセブン&アイは「米国コンビニ主体のチェーンストア」という感じがしないでもない。セブン-イレブン・ジャパンの成長率が鈍化する中で、米国コンビニ事業の強化に大きく舵を切ったことになる。
▼重要なことだが、両グループが主体とする事業モデルは大きく異なっている。イオンのコンビニ事業は極めて弱い。ミニストップ(1959店)は、営業総収入は734億円、11億円の赤字である。しかし、イオンには「まいばすけっと」がある。そしては、「ヘルス&ウエルネス事業」として、ドラッグストアがあり、営業収益1兆310億円、営業利益419億円と好調だ。ドラッグストア業界で売上高1兆円を突破したウエルシアがあるのだ。
これらの他に金融事業や電子商取引(EC)、海外事業といった側面を持つ両グループの異質の戦いは、量的拡大一辺倒だったわが国小売業の進化に寄与することになるはずだ。
(2022・05・17)
