惣菜部門の新しい敵は、外食のテイクアウトメニュー・・・

コロナ渦の影響が消えつつある。25日の新規感染者数は全国で35,190人と高止まってはいるが、国内の重傷者数が103人と落ち着いていることもあり、意識は随分と日常に戻りつつあるようだ。気温が高まっていることもあり、道行く人たちのマスク着用率も人数の少ないところでは低くなり始めた。

▼コロナ渦の影響で特需にも似た影響を受けたスーパーマーケット(SM)業界も徐々にではあるが本来のトレンドに支配されるようになるかもしれない。この2年半に渡り話をさせて頂いたのは、トレンドに戻った時の準備がどれだけ出来るかが足下の課題になると言うことだった。本来のトレンドとは、人口減少・高齢化とそれに伴い発生する人手不足、消費者のライフスタイルの激変とその対応、生産性の向上、進まなかった業態革新などの環境変化を見据えた対応である。そして、いま原料原価の高騰など新たにクリアしなくてはならない課題が生じている。

▼そんな中で、日本経済新聞が一面トップ記事で『外食、4年ぶり出店増 店舗数コロナ前超え』を伝えていた。この記事、出店計画を明らかにしている45社での比較ということだが、22年度の新規出店数の合計は1220店になり、直近では18年度の1396店をピークに21年度まで前年割れを続けていた。4年ぶりに前年を上回ることになる。

閉店数も、22年は486店の計画。20年度が1762店、21年度は875店であるので、不採算店の閉店も一巡したものと思える。出店と閉店との差である店舗増加数も19年度実績を大きく上回る。計画通りになれば、年度末の店舗数は2万2134店となるという。

▼出店数が増える企業は立地や業態を見直している。都心部のビルへの出店を控える一方、テーブル席の多い郊外向け喫茶店などの業態を増やす。携帯電話の位置情報を基にした人流データからも、まん延防止等重点措置解除後の4月末時点でも6割台にとどまる。平日も自宅周辺の店に立ち寄るケースが増えているという。また、持ち帰り弁当や惣菜などの売れ行きも良く、持ち帰り業態を強化する動きもある。郊外出店や新たな業態の開発意欲は高くなっている。日本フードサービス協会による外食産業の売上高は昨年12月から4カ月連続で前年同月を上回っており、需要回復の兆しがある。居酒屋業態は厳しいようだが。

当然のことだが、この外食の増加は、内食に影響を与える。SM業界の既存店の伸び率と日本フードサービス協会が発表するそれとを重ねて見るとよく分かるのだが、片方が伸びると当然片方に影響が出ている。「レストランの味が気軽に自宅で食べられる」という新しい食事体験を覚えた消費者の胃袋合戦は熾烈になると考えられる。何の革新も起こさなかったのに、売上げが伸びてしまったというSM企業は要注意である。

(2022・05・27)