4月の家計調査(総務省)結果が発表された。2人以上世帯の消費支出は30万4510円で、物価変動の影響を除いた実質で前年に比べ1.7%の減少であった。2カ月連続の減少である。消費支出を構成する10項目のうち、5項目が減少した。「食料」は2.1%減、「交通・通信」8.1%減、「家具・家事用品」2.2%減、「住居」10.6%減であった。外出が増えて家庭内での食事需要が減少したのだろう。物価上昇も響いているようだ。
▼毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)も発表された。4月の1人あたり現金給与総額は28万3475円(前年同月比1.7%増)だった。ただ、物価変動の影響を除いた実質賃金はでは、同1.2%減となり4カ月ぶりのマイナスとなった。
所定内給与は1.1%増、残業代などの所定外給与も5.9%増と伸びている。パートタイム労働者の所定外給与が15.6%増と増加幅が大きく、「まん延防止等重点措置」が全国で解除され、飲食店などの営業制限がなくなった影響が大きいのだろう。総実労働時間も、コロナ前の水準に戻って来ているようだ。
▼名目賃金にあたる現金給与総額の伸びを上回って消費者物価指数が上昇している。日銀の黒田総裁は、共同通信社開催の会合で、値上げに関して、「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」とし、コロナ禍で積み上がった貯蓄が値上げへの耐性を高めているとの仮説のもと「家計が値上げを受け入れている間に賃金の本格上昇にいかにつなげていけるかが当面のポイント」と講演した。円安に関しても「安定的な円安方向の動きであれば、経済全体にプラスに作用する可能性が高い」との認識を示した。
▼日本という国の経済をマクロからみての話なので、生活者の感覚とは異なり、使われる言葉も独特なものだろうから、額面通りに受け取ってはいけないのだろうが、「家計は値上げを受け入れているというのは何を根拠の発言」との声がTVのワイドショーの画面からは溢れている。原材料やサプライチェーンの崩壊によるコスト増を価格に転化しているコストプッシュインフレの中での企業益は多くを見込むことは難しい。国の様々なリスクを考慮すると利上げは出来ないのだろう。ただ、食品価格とガソリン価格の上昇は許容の範囲を越えようとしているのではないだろうか。日銀の使命は、「物価を安定させること」と義務教育の課程では教えられたように記憶している。日銀は政治との距離が近すぎて、独立性をかなり失ったようにも思える。
数ヶ月前に発表された複数社の「生活意識に関するアンケート」の中で、共通して、コロナ前と比べ「価格の安さ」は低下し、「安全・信頼」や「環境や社会に配慮」などが上昇していたのだが、これは価格安定を前提にしたものであったのだろうか。
小売業も、よほど価格政策を意識しない大変な結果が待っているかも知れない。
(2022・06・08)