コロナ禍により食品小売業態は特需にも似た風が吹いたが、コンビニエンスストア(CVS)業界は苦しんだ。大手3社の2021年度の既存店売上高は前期実績を上回ったが、その伸び率は前期の落ち込み分を挽回するには至っていない。その為か、コロナ渦の影響に対して反転攻勢に向けて大きく動きだしている。業界誌である『激流』、『Diamond Chain Store』が特集を組んでいるのでピックアップしてみたい。
▼リモートワークの定着、外出や旅行を控える動きが、オフィス街や都心部立地の店舗の利用が減っているのが要因といわれている。その上、成長源であった新規出店が難しくなっている。かつて大手CVSは年間1000店前後を新規出店していたが、21年度の店舗純増数はセブン-イレブン・ジャパンが120店、ローソン163店、ファミリーマートは77店の純減となっている。こうした傾向を受けてか成長を海外に求める動きも顕著になり、セブン&アイ・ホールディングスはガソリンスタンド併設型CVS「Speedway」を総額2兆円超で買収した。今後は日本、北米を除く国・地域での事業拡大を目指し、25年度までに5万店の店舗網を確立したい方針を明らかにしている。
▼2021年度決算で、CVS各社から再成長に向けた方針が示された。方向は大きく二つだ。
各社は冷凍食品、野菜、大容量商品、日用品など、ニーズが高い商品群の品揃えを強化して点数アップのためのワンストップショッピングへの強化、そして客数増のための仕掛けづくり。確かに客単価は上昇している。これは、近くの店で買い物を済ます傾向が強まっていることなのだ。ただし、これは他業態と同じ土俵での戦いでもあるので、来店動機づくりにも力を注いでいる。それが商品フェア、看板商品の開発、出来たて商品の拡充などだ。
そして、もう一つが配達になる。セブンイレブンは自前の配送システムを構築、ネットコンビニ「7NOW」の全国展開を急ぐ。ローソンは複数のデリバリー企業と提携し、約3000店から商品を配送。また、店内厨房をゴーストキッチンとして活用、新しいブランドで、デリバリー専用メニューの提供を準備している。ミニストップも追随、ファミリーマートも一部デリバリー企業と組んで商品配達の実験を開始している。
▼CVSはこれまでも新しい需要を切り開き、成長を続けてきた業態である。次なる施策を加速させているので、商圏内でどのような存在感を示すのか注目するべき存在といえる。ただし、資源高、エネルギー高の動向が顕著になっており、電気代をどう抑えるか、商品値上げの中で価格と価値のバランスをどうとるのか大きな課題になりそうだ。
もっとも、コロナに代わる新たな課題は、われわれSM業界でも同じではあるのだが。
(2022・06・12)